新潟の映画野郎らりほう

ブラインドネスの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ブラインドネス(2008年製作の映画)
4.1
【盲目・暗黒故に見えるユートピア】


都市機能・市民生活が崩壊した極限状況下で、人の暗部が強烈露呈するSF作品。 VFXを極端に排したSF世界構築等は リアル派のメイレレスならではで、周辺状況をもれなく描きつつ主要人物の心象に迫るのがひじょうに巧い。

恐怖下・極度ストレス下での暗部心理パニックが見事に表現されている為 観賞中気分は最悪だが(凌辱場面は本当にキツく パゾリーニの「ソドムの市」が若干頭をかすめた)演出面は総じて巧みだ。

この手の極限状況モノは 人の暗部を見せるだけ見せて救いの無いまま終わる輩が多いが、本作は 極限状況が人の絆を強め 外面や人種に捉われずに人の内面によって結び付くユートピア的希望を示しているのが救いか(しかし視力を失って得る希望は絶望的希望だが…)。

全世界キャスト起用も きちんと作品主題として機能しているのがいい。




《劇場観賞》