shino438

甘い人生のshino438のレビュー・感想・評価

甘い人生(2005年製作の映画)
3.0
久々に鑑賞。韓国ノワールの名作。なぜかアラン・ドロンの「サムライ」を思い出す。アクションのキレのよいノワールものとしては、この映画と「アジョシ」は最高だと思う。その次が「オールド・ボーイ」「チェイサー」あたりかな。

「女にモテないイ・ビョンホン」なんて考えられないと思うかも知れないけど、そんな事言ったらアラン・ドロンなんかもっとそうじゃん!って感じで、本作ではそんな危惧を全くせずにしっかりキャラにハマっていた。

ヤクザ内の「クリーナー」的な立場の主人公がボスの愛人に興味を持ってしまった為に雪崩のように襲いかかる不幸。これまでずっとうまくやってきて、スタイリッシュでカッコよかったビョンホンが怒涛の如く落ちていく様は圧巻だったけど、そこからの「静かに怒るビョンホンの顔」がカッコよすぎた。「挽歌」のチョウ・ユンファみたいな色気がある。

ストーリーはシンプルながら(といっても主人公もヤクザのボスも動機についてはなんとなくしか分からない)冒頭の回し蹴りから、最後の銃撃戦まで、アクションシーンが素晴らしく、「残酷悲劇映画」だけではない雰囲気がある。同じ監督の超残酷映画「悪魔を見た」も、なぜかアクションシーンが素晴らしかった。

冒頭とラストにビョンホンの心情を表す「師匠と弟子の会話」が印象的な余韻を残す。甘い夢はかなわない。人生はほろ苦く残酷だ。

ラストの回想シーンについては夢オチという人がいるんだけど、個人的にはその見方は好きになれないなー。こんな事になってしまうとは思っていないという時間軸を戻す演出だと思った方がより切なくて余韻が残ると思う。
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