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復讐者に憐れみをのshino438のレビュー・感想・評価

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)
3.0
やっぱり映画は「公開された時に観る」のが一番ベストなんだなと再認識した。パク・チャヌクのいわゆる「復習三部作」とされる1作目。ひたすら「嫌な気持ちしか残らない」後味の悪い映画で、そういう意味ではこれぞ韓国映画、という1作。

本作は2002年の作品なんだけど、どうしても「たけしの映画」のイメージが最後まで拭えない。ほぼ音楽無し。カメラを止めたカット。表情を固定して感情表現させるカット。間を端折って展開させる演出。どれもこれもが「北野的」。監督はこの後「オールド・ボーイ」と「親切なクムジャさん」を撮るんだけど、本作とは作風がだいぶ違う事を考えても、「たけし意識してるなー」感がありますね。ちなみに北野映画らしさが際立つ、「その男〜」から「ソナチネ」「HANABNI」まではほぼ本作よりも以前の作品。

ただし、たぶん当時はこれで良かったんだと思う。韓国映画は良くも悪くも「往年の名画のすべてを飲み込んで辛口に仕上げる」。まさにその過渡期の作品だと思う。

この映画はタイトル通りひたすら「復讐者」の映画だ。病気の姉の為に闇臓器移植に手を出してすべてを失う男とその彼女。娘を誘拐されてすべてを失う会社社長。どんどん歯車は狂って行って、とにかく登場人物すべてが救われない。主要メンバーはもちろん、物語のきっかけにすぎない人から通りすがりの出前の兄ちゃんまで、不幸の連鎖がひたすら続いて、みんな救われない。「憐れむ」事はあっても「許す」事は決してない。徹底した暴力。

全編救われない映画だけど、なぜか少しコミカルな印象を受けるのは、やはり「北野」的な演出が効いているんだと思う。この淡々とした演出がなければ、本気で血みどろの「観てられない」作品になっていたかも知れない。

ソン・ガンホ若い!「シュリ※この映画の3年前」の時のおっさんな感じから若返ってる!彼の猫背にジャケットを羽織った時の首の抜け具合がなんともセクシーで好きだ。ペ・ドゥナも若い。なんとなく「恋する惑星」のフェイ・ウォンみたいな雰囲気だった。めっちゃ酷い目に合うんだけど・・・。実質的な主人公である聴覚障害者役のシン・ハギュンはとても良かった。まさに彼こそが「復讐者」と「憐れみ」を持った人物なのかも知れない。
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