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インビクタス/負けざる者たちのRのレビュー・感想・評価

4.9
イーストウッドを見ようイベントやっていこう第1弾! もーこれは序盤から感動しすぎて始終涙で瞳が濡れていた! ラグビー全然知らんけどまったく問題なしやった。南アフリカでネルソンマンデラが27年の獄中生活から解放される日、整備されてキレイなラグビー練習場で白人たちが練習し、整備されてないフィールドで黒人たちがサッカーをプレーしてる。鮮やかな対比で一気に南アの状況を描破! 巧み! その後マンデラが大統領に就任。それまではアパルトヘイトで、1割の白人が9割の黒人を迫害し支配していた。白人たちはその立場が逆転するのを恐怖している。その一方で白人に憎悪と敵意と復讐心を燃やす黒人たち。水と油のようにお互いにまったく相容れない。これではいけない、とマンデラさん。間もなく南アで開催されるラグビーのワールドカップを活用して、民族間の溝を埋めようと思いたつ。1人の黒人を除いてメンバー全員白人で、ある意味アパルトヘイトの象徴であったラグビーチーム。当然のように黒人たちはまったく無関心ななか、マンデラは熱烈に彼らを支持し始める。彼にとってそれは政治的戦略などではなく、ヒューマンとしての戦略なのだ。もうねーマンデラさんの人格がホンっトに素晴らしい! 永遠と思えるようなすさまじい迫害を耐え忍び、踏ん張り、乗り越え、虹の国家を建設しようと、真に人道的な精神で、ひとりひとりの人間に愛と誠実をもって語りかける。力強いけれど、まったく圧力や強制を感じさせない。おだやかで、やさしく、あたたかい。ただただ圧倒的な人間力で周囲の人々を変化させていく。そんな彼の薫陶を直接受けるのが、南アのラグビーチーム、スプリングボクスの主将フランソワ。彼は、ほんの短いマンデラとのアフタヌーンティーで、彼の包容力に浴し、その精神を受け継ぐのだ。そして、最初は頑なに閉じられたチームメイトの心にそれを浸透させていく。本作の面白さは、普通だったらその浸透プロセスこそをドラマチックに描くだろうってとこを、ほとんど、ってかまったく描かない。結果で見せる。たぶんそこに、え?ってなる人も多いだろう。けど、結果見て、一目瞭然でしょ。何で勝てたかは分かるでしょ。いちいち説明しないよっていう、そういうサラっと感。これぞイーストウッド流。ほんま洒落てる。マジ、感動しすぎて何度震えたことか。ひとりの人間から放たれる希望の光が周囲の人間に伝播していき、それがどんどん広がって、多くの人々の運命を大転換させる。誰ひとり信じることのできないような奇跡的な出来事は、たったひとりの人間が負けじ魂で立ち上がることから始まるのだ。スゴイ!!! しかも、マンデラさんは、自分のみならず、誰しもの心の中に、人間精神の崇高さが等しく備わってると信じている。それ故に、誰に対しても尊敬と信頼を持って接する。その振る舞いが、周囲の人々の心の中から偉大な精神を呼び起こしているのだ。何というシンプルさ。これこそまさに、世界に遍満する悪とたたかうための非暴力闘争のモデルと言えるのではないだろうか。とはいえ、まずひとりの人の心の中に崩れぬ平和の砦を築くことが大変な難題であるのだけども。というわけで、偉大なる魂、ネルソンマンデラの獄中生活を支えたインビクタスという詩を引用し、調和と平和への祈りを胸に感想文を終えたいと思います。

私を覆う漆黒の夜
鉄格子にひそむ奈落の闇
私はあらゆる神に感謝する
我が魂が征服されぬことを
無惨な状況においてさえ
私はひるみも叫びもしなかった
運命に打ちのめされ
血を流しても
決して屈服はしない
激しい怒りと涙の彼方に
恐ろしい死が浮かび上がる
だが、長きにわたる脅しを受けてなお
私は何ひとつ恐れはしない
門がいかに狭かろうと
いかなる罰に苦しめられようと
私が我が運命の支配者
私が我が魂の指揮官なのだ

I am the master of my fate.
I am the captain of my soul.

あ…! ちなみに…最後のほうのスクラムの辺のスローモーション、みんな低い声でモーモー牛のように見えてワロテまいました。ホンマごめんなさい笑
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