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オカルトのhorahukiのレビュー・感想・評価

オカルト(2008年製作の映画)
3.8
『コワすぎ!』でお馴染み白石晃士監督によるトンデモ系POVホラー。

オカルト的恐怖と現実的恐怖を絶妙なバランスで融合させた良作。チープでバカらしい話なんですけど、本作もさり気なく凄いことやっちゃってて、白石監督のセンスに脱帽です!

あらすじ…
三年前、観光地となっている吊橋の上で無差別刺殺事件が発生。その犯人は崖から飛び降り遺体は見つかっていない。当時の被害者であり、生存者の男(江野くん)に取材をするうちに、驚くべき真相が見えてきて…。

江野くんのリアリティが凄い!
いわゆるネカフェ難民で、その日暮らし。派遣の登録をしてるけど、年齢がいってるせいでなかなか仕事がない。早朝からネカフェ→マクドで、3時間もシフトのキャンセル待ちとかマジで見てて辛くなるわ…。100円を撮影スタッフに借りるとことか笑えない…笑ったけどね(笑)表情、仕草、話し方全てが、演技なのに演技に見えない。マジで居そうな人物像を表現した宇野祥平がすごい!

通り魔殺人の真相を解明するというサスペンスチックな雰囲気でスタートする本作ですが、真相に迫るにつれ常軌を逸したオカルトな物語にシフトしていく。そして、そのオカルト的なバカバカしさの不気味さを盛り上げていくことによって、非常に現実的で身近な恐怖をも感じさせるところが本作の面白いところです。

作中で、恐怖を与える側であるキャラクターの言動に嫌悪感を覚えさせつつも、恐怖を感じる側であるはずの観客の意識を彼に同調させていく。恐怖を与える側のキャラクターが感じている危険な高揚感すらも観客に植え付けながら展開していく構成の巧みさが素晴らしい。

本作は、テレビでこういった事件を対岸の火事的に見ている此方側の人間であったはずの観客を、白石監督を通じて彼方側の人間と精神的に同調させてしまうんです。ゆえに、最終的に感じる恐怖は現実的事件そのものから発生するものだけではなく彼方側の人間が感じる底知れぬ絶望に近い恐怖。本作のうまさは観客を彼方側の人間と同調させることによる恐怖対象や高揚感の対象のすり替え。だからこそ、本作は通常の映画では感じないような危険な感情や、見たらダメなものを見てるような背徳感を観客に植え付ける。

そのすり替えにモキュメンタリーの手法が非常に大きな役割を果たしている。というより、モキュメンタリーじゃないと絶対にできない作品。オカルト的なちゃっちい描写はいつも通りですが、実際に社会のどこかに暮らしてそうな圧倒的なリアリティのある人物とその生活実態を表現する上で間違いなく最も適した手法。POVを1つの表現手段とし、それを最大限に活かした作品を作るのは白石監督の凄さだしPOVのあるべき姿だと思います。

やっぱり白石監督は凄い監督ですね!『コワすぎ!』も4で止まっちゃってるから続き見たいんですけど、なかなかレンタル置いてないんですよね…(^_^;)
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