傍若無人なヤクザらによる(言ってみれば)兄弟喧嘩に、取るに足らない、自分で自分を腐し気味なチンピラが巻き込まれる、そんな在り来たりな一昔前のVシネみたいなピカレスクもの。

初っ端からセリフの聞き取りにくさは多少気になったが、観始めるうちにこの映画は会話を楽しむものではなくフィーリングと熱を楽しむためのものであることが分からされる(ランタイムのちょうど良さが効果的に作用している感じ)。
出力されているのは、頭が悪そうな、如何にもなヤクザ演技だが、日常に不満を抱いている人のそういう蟠りを突いてくる、そんな展開もキャラを通してだが繰り広げられていた。

劇終後に蓮田監督と、リモートで主演の高木勝也氏の登壇があったのだが、その際にキンジロウというキャラの出力の仕方や、父親に対する高木さんなりの解釈、そして「撮影後の編集が地獄だった」と監督が語っていたエピソードなど色々聞けてよかった(今日は晩飯食った後割りと無理して観に行ったので)。

ふた昔ほど前の『生きない』（大河内奈々子さんが良かったわ）と被ってしまって見逃すところでしたが、映画監督の岸本景子さんに堤健介さんが脚本やってたり保坂直希さんがプロデューサーだったりなんだと教えていただき急遽映画館へ。

舞台挨拶（シアターセブンでは最終日なのにありがたいことです）にはキトさんと一緒にまさかの堤さんも登場で､ほんと見ることができて良かったです。

役者さんたちがそれぞれに熱心で気合いが入っていて､現場の雰囲気がよく伝わる熱い映画でした。ある種成功した学生映画のような。

冴えない町の弱小暴力団のお世継ぎ問題を描くストーリーそのものに特に新規さはありませんが、アラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンに見えなくもない男性二人の腐れ縁は十分に伝わりました。

お相撲シーンで歯の5､6本も折れるのかしらと思ったら意外とソフトな立回りだったのと､いくら組が弱小だとはいえ、あのサイズのメルセデスに頭目が乗ってるのには笑ってしまいましたが。

キトさん、役者も良いですけど監督としての次回作が待ち遠しいですね。

K's cinemaにて鑑賞。

率直に言うと内容というより画力で勝負してる感じ。小説ではなく絵本のページをめくってるような。
疾走感も世界観も好みだっただけにもうちょい登場人物ひとりひとりの情報が欲しかった。