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メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版の小のレビュー・感想・評価

3.8
1997年の中国返還直前の香港で、社会の底辺に生きる若者たちを取り巻く空気感を描いた映画かな。希望のない将来に対し、やり場のないエネルギーがくすぶり、ときに爆発するというような。

香港は貧富の格差が大きく、底辺の若者には教育が十分に行き届かない。一度落ちこぼれたら再チャレンジは不可能でチンピラにでもなるしかなく、その結果、治安も悪い。主人公のチャウは母親思いのいい子なのだろうと思うけれど、カタギの仕事に就けず、借金の取り立ての手伝いをシノギにしている。

チャウには弟分のロンがいて、借金取りに向かった先で、ちょっとボーイッシュだけれど魅力的な少女ペンと出会う。ロンもペンも問題を抱えてはいるものの、飛び降り自殺した女子学生の遺書を拾ったことをきっかけに、3人はなんとなくいい関係になっていく。

チャウは、厳しい状況にありながらも、他の若者と同じように恋に落ち、自分の存在を認めてもらおうと懸命にもがく。幸せそうに輝く瞬間はあるものの、状況は次第に悪くなっていく。中国返還でこの状況が改善されるのだろうか、いや…という感じで切ない気持ちになってくる。

そして現在、中国返還による不安は顕在化し、“香港人”としてのアイデンティティーは危機にさらされている。2014年、香港長官選の民主化を求めた学生らを中心とした大規模デモ「雨傘運動」が起こり、香港の2015年から10年後の未来を、若手監督5人のショート・ストーリーで描いた映画『十年』が“香港人”の琴線を刺激した。

貧富格差の程度を示すジニ係数などで見ると、日本も格差が拡大する方向にあるのは明らかで、教育格差も広がってきているのではないかと思う。本作は香港のことと片付けられないかもしれない。

●物語(50%×4.0):2.00
・若者の絶望感が強く伝わってくる。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・主役の俳優さんはいい味出している気が。

●画、音、音楽(20%×3.0):0.60
・日本の昭和の青春ドラマ的な…。
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