ヨーク

プッシーケーキのヨークのレビュー・感想・評価

プッシーケーキ(2021年製作の映画)
3.3
今年の未体験ゾーンの映画たち2024の1本目です。
未体験ゾーンの映画たちといえばテアトル系劇場の毎年恒例のイベントで、俺も楽しみにしているものなんだけど、そのイベントで上映される作品の傾向はというと大体が低予算なジャンル映画で一般公開はされないマニアックな作品たちということがある。だからこそ観る機会が稀少な作品を観ることができるという意味で大変意義があるイベントなわけだが、低予算でB級なジャンル映画がメインなのでぶっちゃけストレートな意味ではそんなに面白い映画を観られるわけではないんですよ。
アイデアだけは突出してるけど予算がないから安い映像で尺稼ぎのシーンばっかりな映画とか、とりあえずエロとグロに頼ればなんとかなるだろっていうのが見え見えな映画とか、取り敢えずゾンビさえ出しとけば(以下略)とかそういう作品が大半を占めるのが未体験ゾーンの映画たちというイベントなのです。んで本作『プッシーケーキ』がどうだったのかというとだ、もう『プッシーケーキ』というタイトルの時点で語るに落ちる(誤用)という感じの作品なのだが、まぁ大体そんなタイトルから受ける印象通りの作品でしたよ。
ただ、ちょっと面白かったのは本作は公式のあらすじ紹介が、人気低迷中のプッシーケーキ(注:バンド名です)は人気を取り戻すためにツアーを組むことにした。しかし、着いた先には誰もいない! 途方に暮れていたが、そんなことは些細なことに過ぎなかった...。というもので何だかよく分からないんだけどサムネイルを見るとおそらくステージ衣装に身を包んでいるのであろうプッシーケーキの面々(4人組の女性)が横並びになっている画像が使われているので、これは昨年の未体験ゾーンの映画たちで公開された『スランバー・パーティー 大虐殺』みたいな感じで女性グループがスラッシャー映画的な殺人鬼と戦う映画だろうと思っていたんですよ。B級ホラーといえばスラッシャー系の殺人鬼ものが定番だしね。そういう先入観を持つのも仕方ないだろう。
でも蓋を開けると全然違っててびっくりしたね。あらすじとしてはまず映画が始まると、異次元への扉を発見したとかいう新聞記事を紹介した後に、その異次元を発見した科学者の息子と思われる人物がコンピューターをカチャカチャやって地下室へ行くとそこには異次元へのゲートが…。この意外で唐突な冒頭の描写のラッシュの時点で大分置いてけぼりを食らってしまうのだが、映画はそんな俺の心境など無視して続いていく。なんとその異次元ゲートからはプレデターを大分ショボくしたような宇宙人? 異次元人? みたいな人…かどうかは分からんが、ともかくなんかヤバそうな生物が出てきてその科学者の息子っぽい子供の顔にカルピスみたいな白濁した液体をぶっかけて殺してしまうのだ! なんだこれは!? 全然意味分かんねぇぞ! となった辺りで場面が変わってプッシーケーキの面々が登場。そして上で書いたあらすじに続くわけだが、要はプッシーケーキの面々がやってきたツアー先の誰もいない町っていうのは異次元からやってきた変な人に全滅された町で、その異次元野郎のカルピス的な白濁液を受けるとゾンビになってしまうわけですな。そう、なんと本作はゾンビ映画だったのである!
いやー、それは読めなかったわ。普通に人間の殺人鬼が暴れるやつだと思ってたわ。ていうか異次元人が出てきたときもそういうSFモノかと思ってしまったのだが、何ということはない、世に大量に溢れるゾンビ映画の一種だったのである。ま、低予算映画の代名詞的なもんだからね、ゾンビもの。そう考えればさもありなんな感じですよ。
そういう意味では映画自体がどういうジャンルなのか分からないままにどんどん転がっていくという面白さはあったのだが、あ、なんだぁゾンビものかぁ…というのが分かってからはやたらカルピスを吐き出すだけの安いゾンビ映画になったので中盤以降の面白みはイマイチではあった。でもまぁこんなもんかなというくらいには面白かったですよ。プッシーケーキの面々はそれなりにキャラが立っていてビジュアル的にも良かったし、本作のゾンビはなんか死体に卵を植え付けたりするんだけどその死体からボトボトと零れ落ちてくる卵の描写とかは中々気持ち悪くて良かったですね。
ちなみに本作は海沿いの町が舞台らしくてゾンビ化された人間が浜辺に首だけ出された状態で埋められて、そこにどんどん産卵されていくみたいなシーンがあったんだけどあれは何かウミガメの産卵的な絵面で面白かったな。そこでゾンビ×ウミガメっていうのはまだ無かったんじゃないか? と少し心がときめいたんだけど、その海辺で産卵ということ以上にウミガメ的要素はなかったのでそこは残念でした。
まぁそんな感じでちょうどいいC級D級な映画ではないかなと思います。まさに未体験ゾーンの映画たちといった風情の作品だったので、本作が24年の未体験ゾーン1発目だったのは幸先いい感じでしたね。別にオススメはしないけど!
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