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コンテイジョンのbackpackerのレビュー・感想・評価

コンテイジョン(2011年製作の映画)
4.0
PROFET & PROFIT

COVID-19(以下コロナ)の世界的パンデミックにより、一躍有名作品となった本作。
スティーヴン・ソダーバーグ監督ファンや、ウィルス感染系パニック映画好きの間では、前から知名度のある映画でしたが、普段映画をあまり見ない層や、所謂普通の一般大衆という人達にも、広く知られるようになりました。
近年の動画配信サービスの興隆(オススメ映画に出てきて知ったという方も多いのではないでしょうか?)とSNSによる拡散の合わせ技が、知名度向上に役だったのは間違いないと思います。

コロナ禍の始まりの時期に、キャスト陣によるメッセージ動画が公開されたのも、ネット社会の発信力を体現する出来事でしたね。
(実際、劇中でもジュード・ロウ演じるジャーナリストが、自身のブログでフェイクニュースを拡散し市民に謝った情報を伝播させるという、発信することの持つ"力"を遺憾なく見せつけます。)


初鑑賞は2015年の8月2日、BSプレミアム・シネマで放送していたものを(録画して?)見ました。
オーシャンズシリーズが大好きだったこともあり、最初は「ソダーバーグ監督の映画だ!面白そう!」という楽観的認識だけで見始めましたが、
真っ赤な文字の"DAY2"の不気味さ……
早々の人死に(幼い息子まで容赦なく!)……
薄暗く灰色の冷淡な画面……等々
ゲンナリ必至の映画が幕を開けた事によって、たまらなく打ちのめされてしまいました。

結局、「面白そう」という点だけは当たっていました。
そうです、本作、いっそ冷酷な程陰鬱としていますが、引き込まれ見入ってしまう面白さがあるのです。

それは、説明調で事実を積み重ねる画作りを徹底し、劇伴すら用いず、登場人物達の身に降りかかる避け難い現実を切り出していく、容赦ない淡白さが生み出す"リアリティ"の持つ説得力の為ではないでしょうか。

このリアリティの持つ説得力に完全に飲まれていた私としては「きっと高評価が多いに違いない!」と思い、初鑑賞後評論等調べて読んでみました。
結果、「荒唐無稽」「あまりに暗すぎる」「現実的でない」といった評を目にすることが多く、「リアルで冷淡で怖くて、こんなに面白い映画なのに、評価は芳しくないのか……」と残念な気分になった事を覚えています。

ところがどっこい、コロナのパンデミックが発生してみると、高評価(点数的な意味ではなく)意見が溢れかえったではありませんか。
前述した、「そもそも知名度が低く一部の人しか見ていなかった」という推測と、「コロナに合わせて拡散し多くの人に鑑賞された」結果の変化ということでしょう。
この現象が、映画の魅力・価値・評価軸といった〈映画の見方〉が、常に移り変わると強く実感できたことは、大変貴重な経験でした。


さてさて、無慈悲で容赦なく残酷なリアリティがもたらすやるせなさに、一通り浸っていきますと、ワクチンの開発に伴う希望の光が差し込み、登場人物達と観客はひと心地つくことができます。
そんなクライマックスでやっと大団円……と思っていれば、そこで明かされる"DAY1"の真実。
このラストを把握した上で再鑑賞するのもまた一興。
コロナを経験した今、改めて鑑賞していただきたい一作です。
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