140字プロレス鶴見辰吾ジラ

空飛ぶゆうれい船の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

空飛ぶゆうれい船(1969年製作の映画)
4.2
【日米野球】

昨年の日米野球の第1戦にて、我らが日本代表の柳田悠岐のサヨナラホームラン見ました?超最高の格好良さ。フルスイングでボールをシバキ上げて衝撃でズレたヘルメットをクールに直した確信歩き…

さて、本作は映画評論家の町山氏もオールタイムベストのひとつとして挙げられておりますが、今のアニメーションから見ると、圧倒的に稚拙でないか?いやいや、たかだか60分に詰め込まれた“怒濤の展開“と当時彼の国に対して抱いた反抗心剥き出しの熱量は怒りのデスロードだ。映画の持つ旅性をこんなにも感じて、さらに若き宮崎駿が手がけたミリタリーアクションシーンの躍動感や熱量は必見である。

序盤は少年の勇気ある成長譚かと思ったが、絡んでくる軍事産業に洗脳系CM、巨大ロボにフル装備のオンボロ空飛ぶゆうれい船。ディテールの格好良さだけでなく、とにかく政府の都合でぶち殺される国民やその裏に存在する黒幕。

「先生はママと、政府は火星人と警察は悪い人と、僕の知らないところで勝手に話しがついている…」B'zのLiar,Liarより引用。

明らかに洗脳系CM垂れ流すのはコカコーラだし、それじゃ裏世界に悪として描かれるのは彼の国じゃないですか?

何で子供向けアニメに詰め込んだのか?それは次世代に託したのか?「空飛ぶゆうれい船」とファンタジックホラーなタイトルから想像もつかないような場所に行き着き、人が溶けて消失し、巨大なカニが暴れ回る…もうハイカロリーすぎる!しかしながら主人公の出世の秘密から生き残ることへの重大さ、カミカゼアタックを賛美せず彼の国に一撃をお見舞いし、そして次世代に喪失を引き継がせないという粋なメッセージ性も含め、オカルトからミリタリーから少年の喪失と成長から、とにかく怒濤の渦に映画的快楽を確かに感じさせる千疋屋のジュールみたいに濃縮された一本。