LudovicoMed

ストップ・メイキング・センス 4KレストアのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

4.6
《IMAXのド迫力で浴びる伝説のライブ、、最強の贅沢だった》

『アメリカンユートピア』の爆誕で再評価が高まったトーキングヘッズ時代のライブ映画が今度はA24の提供で4K神環境で全国の映画館に放たれた。本作はライブ映画の金字塔として昔から君臨していたため、通ぶってやろうとYouTubeのしょぼい鑑賞したのが出会いだった。案の定「スゴい」のしょぼい感想留まりで、この奇跡のような楽しさを1ミリも理解してなかった。そして『アメリカンユートピア』は当時年間ベストにしたほど虜になってもなお再鑑賞することはなかったが、IMAXチャンスの今、いざ参戦してきました。

印象が全然違った、なんだこの参加型リズム誘発現象は。そしてあっという間すぎた。『ストップメイキングセンス』="意味付けをやめな"の名の通り複雑な音楽性よりまずは体感による会場への同化がジョナサンデミ監督による異質な造り効果で先にやってきて、誰もが自由に身を任せられるようその場に居る感を堪能できるタイプの喜びではないか。なので『アメリカンユートピア』の洗練されたステージを映画的アングルならではの完璧な眺め、変幻自在な演出で時に演劇チックになる凝ったパフォーマンスとは実は逆のアプローチで楽しみ方が全く違った。いやさライブのコンセプト自体の違いなのかな、とりあえず鑑賞中足でノリを刻むのがもうやめられない止められない。なんせサポメンギターのアレックスウィアーの狂ったような豪快な煽りがヤバすぎた。
特にIMAX版は何が凄いって、音響が迫力満点で最初の"Psycho Killer "の平面的サウンドからメンバーが増えるにつれドンドン臨場感が増し音が重なり最高潮のボルテージに達したころには振動がダイレクトに伝わる。手元のドリンクからも震えを感じ取れるではないか。

何よりやられたのは、もし自分がミュージシャンなら絶対真似するライブの始め方だ。光が漏れるローアングルからデヴィッドバーンの歩いてくる足元、そしてラジカセを置きビートテープを流すとラフにギターを掻き鳴らしパンアップ、ギグの始まりだ。超カッコいいわ。舞台はまだリハ中のようなラフな光景。曲目が進むにつれドンドンステージが完成していき、メンバーが増えいつの間にか照明も本番モード。確かに『アメリカンユートピア』も似た構成だが、より盛り上がり度が際立つ。

またこのライブ映画はジョナサンデミの珍しい撮影法により観客への没入度を優先している。一見ラフに撮ってるようで複数の公演を撮影し、計4日間のフッテージを一つのライブのように魅せる。つまり映画でしかあり得ない空間を構築する事で恰も自分が客席で見てる錯覚を綿密に生み出す。だから音楽のマジックが起こる瞬間を映画のウソで見事に映されてるのだ。
ステージ上のメンバー皆がアンサンブルを起こす喜びは言わずもがな、やはり全盛期デヴィッドバーンが!"Once in a Lifetime "が!ギラッギラ。『アメリカンユートピア』のウェルメイドな歌唱力とはまた異なる鬼気がありシャウト気味な歌声で道化を演じる。ボディーランゲージのセンスILLすぎる。クネクネダンス(あれも思わず真似したくなる)ブカブカスーツのアイデアとか変なリズムの取り方とか、よく思いついたなと。マイクスタンドが下がるパフォーマンスなど簡単そうで一歩間違うとダサく見えかねないのをデヴィッドバーンのカリスマ性で魅了させる。

そんな訳で映画館で観てようやくぶっ飛ばされました。『アメリカンユートピア』とは異なる魅力が私を感動させ、すっかりトーキングヘッズのファンになった。
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