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ペペ
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『ペペ』に投稿された感想・評価

Omizu
3.6
【第74回ベルリン映画祭 監督賞】
ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス監督作品。ベルリン映画祭コンペに出品され監督賞を受賞した。

ゴリゴリの実験映画。これに監督賞をあげるのは流石ベルリンという感じ。自分だったら「わけわからん」で終わりそう。

正直わけわからん映画なのだが、何故か見続けてしまう魅力はあるかな。脱走した巨大カバと人間たちが交互に語っていくようなつくりになっている。

なんともコメントしづらい…物語として面白いかというとそんなことはなく、というかそこをそもそも狙っていないと思う。描きたかったのは「人間の残酷さ」なんだろう。最後まで観るとだんだんそのテーマが浮き上がってくる。

決して楽しい映画ではないし、分かりづらい映画である。しかしなんとも形容しがたい魅力があるのは間違いない。ベルリンがこれに賞をあげたという意味も分かる気がする。ゴリゴリの実験映画なので人は選ぶと思うが、僕は嫌いじゃなかった。日本公開は難しそう。
3.8
【カバの残留思念から見るマッチョイズム・都市伝説の死ネマティックレビュー】【東京国際映画祭】
■あらすじ
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの私設動物園で、アフリカから移送された「ペペ」という名のカバが飼育されていたという事実にインスパイアされた作品。

映画は、アフリカから移送され、コロンビアのジャングルで殺害された「ペペ」という名のカバの幽霊の視点で語られる。
それは一頭のカバの数奇な運命を語るトラベローグにとどまらず、植民地主義、生態系、人間と自然との関係、政治と暴力など、さまざまな問題を呼び起こす。

デジタルと16ミリフィルム、モノクロとカラーの混交、さらにはアーカイブ・フッテージの使用など多様なスタイルが組み合わされ、新たな映画言語の可能性を模索した作品である。ベルリン映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。

■みどころ
幽霊になったカバの目線で語る数奇なお話。
率直に言って初見の意味不明っぷりはダントツで、映画祭で監督によるQ&Aでギリギリ理解できるかも…な映画でした。
撮影に4年かけていて、その間にも監督自身でジャングル生活をして主題で何を伝えるか?で構想に構想を重ねていたらしい。それ故に様々な技法マシマシの作品なのも難解さを助長していると言えなくもない。

本作は幽霊になったカバ『ペペ』がモノローグで語ったり、モノクロ・カラー・アニメなどで様々な人間のドラマを映す方式になっている。
植民地支配・人間社会を語る作品だが、
①植民地化…支配被支配というマッチョイズムが人間にもカバにも通ずる本能的属性というのを炙り出す
②特異な存在(カバ)の都市伝説からマッチョイズムが波及する
を追求した凄い映画でした。

ロバ目線で語るEOと違って、人間社会の一種の歴史的愚かさが循環する事を描いてるのも特徴的か。
愚かな歴史が循環するのはセルゲイ・ロズニツァ作品でも描かれるが 本作の場合はドイツによるジェノサイドの史実ベースに因果応報という皮肉が効いてるのが興味深いです。

その循環を利用した人間社会の利己的な動きを描いていてカバの目線で超複層的な主題を潜水・浮上するのが面白かったです。
[ドミニカ共和国、カバのペペの残留思念が語る物語] 80点

2024年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。ネルソン・カルロ・デ・ロス・サントス・アリアス長編四作目。1993年、脱獄し潜伏中だった麻薬王パブロ・エスコバルはコロンビア国家警察の特殊部隊との銃撃戦の末に死亡した。彼は自身の私有地であるアシエンダ・ナポレスの裏庭にある人工湖で4頭のカバを飼っていたが、死亡後は放し飼いとなって天敵の居ない環境で繁殖し続け、現在では200頭近くまで増え、地元の漁師から脅威として認識されている。コカインヒポと呼ばれているらしい。その中で群れから分かれ、地元メディアによって"ペペ"と名付けられたオスのカバは、2009年に当局の指示によって射殺された(アメリカ大陸で殺害された唯一のカバらしい)。本作品ではそんなペペの残留思念が、様々な時間を旅しながらカバ目線の思考を観客に語りかけてくる。エスコバル殺害を伝えるニュース映像に始まり、ペペの両親を空港からアシエンダ・ナポレスまで移送した下っ端の珍道中、ナミビアを訪れるドイツ人観光客のバスツアー、ペペの名前の由来となったアニメ、そして実際のカバの映像に至るまで、ドキュメンタリー、ドキュフィクション、実験映画の垣根を超えて画面サイズ(≒視界)も変わりまくる縦横無尽すぎる語り口によって、アフリカーンス語とスペイン語をマスターしたカバのナレーションというアヴァンギャルドな設定を映像側からも補強していく。カバ目線ということで人間のことを"二本足"と呼んでいたり、抽象的すぎて何言ってるか分からん部分も多かったりするが、自由自在な語り口と相まって意識の流れっぽくなってるのは好印象。ただ、中盤でペペが"私の物語は彼らの物語となったとき初めて語られうるのだ"と発言してから、マグダレナ川流域に暮らす漁師たちの物語となって、ペペは脇役へと追いやられてしまう。名もなきカバが"ペペ"となる物語の形成という意味では必要な段階だし、ペペの残留思念が個体から川を伝って地域へ染み出していくような感覚にはなるので興味深くはあるのだが、正直なところ映画自体の失速は否めず(前半が早すぎた説あり)。60分でまとめてたらもっと点数上がったと思う。これで第一部ってグー・シャオガンじゃないんだから…とはいえ、こんなガチムチ実験映画をコンペに入れるとは流石ロカルノ出身PDだな。リアルイベントの大赤字のせいでクビになったという噂だが、コスリックなんかより全然いいラインナップだと思いますがね。

『ペペ』に似ている作品

EO イーオー

上映日:

2023年05月05日

製作国:

上映時間:

88分

ジャンル:

3.7

あらすじ

愁いを帯びた瞳とあふれる好奇心を持つ灰色のロバ、EO。サーカス団から連れ出され始まった予期せぬ放浪の旅のさなか、善人にも悪人にも出会い、運を災いに、絶望を思わぬ幸福に変えてしまう運命の歯車…

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レオノールの脳内ヒプナゴジア(半覚醒)

上映日:

2024年01月13日

製作国:

上映時間:

99分

ジャンル:

配給:

  • Foggy
  • アークエンタテインメント
3.7

あらすじ

かつてフィリピン映画界の巨匠だった映画監督レオノール・レイエスは、72歳になり引退した今、借金と息子との関係悪化に悩みながら暮らしている。ある日、脚本コンクールの新聞記事を目にした彼女は、…

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