2024年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。俳優ジル・ルルーシュ長編三作目。ネヴィル・トンプソン『Jackie Loves Johnser OK?』の映画化作品であり、脚本にはオードレイ・ディヴァンが参加している(この人も大概ポンコツだからなぁ)。あまりコンペっぽくない作品だなと思ったら、スタジオ・カナルがフランス映画としては最大規模の予算で作ったらしく、明らかに製作費回収の箔付けのために捩じ込まれた感のある作品である。当初の予想通り数合わせ説が濃厚で、案の定、批評家からはボロカス言われていたが、観客からの評価はそこそこ高く、興収もそこそこ高めで、セザール賞には13部門もノミネートされていた。物語は1980年代から90年代にかけて、フランスの地方都市で出会った二人の10代少年少女が、互いへの愛で身を焦がしながら成長し、男は犯罪に手を出し、女はそんな男を思い続けるというもの。もうこの時点で類似するどころかほぼプロットが一緒の作品を何個も思い付くだろう。私が一番最初に思い出したのは同年のヴェネツィアコンペに選出されたブケルマ兄弟『And Their Children After Them』であり、この作品には本作品の監督ジル・ルルーシュが暴力的な父親役で登場している。同作は初恋拗らせ青年の年代記であり、初恋相手が画面に登場すると主人公の様子がおかしくなるなど興味深い箇所も散見されたが、本作品はとにかく既視感に溢れた映像の継ぎ接ぎで構成されている上に演出も古臭く、かつアホみたいに長く鈍重で冗長という、まさに地獄である。確かに、こんな志の低い劣化コピー映画なら、コンペ入りの箔がないとすぐに優秀な過去作や数多の類似作品の中に埋もれてしまうだろう。この手の作品で変わるのは結末をグッドエンドにするかバッドエンドにするかくらいだが、本作品はグッドエンドにするために主人公の忠実な友人である黒人のリオネルが射殺され、それでも愛を選ぶという選択のために忘れ去られるのが度し難い。せめてキャラに愛着くらい持っててくれ。たった一つだけ面白かったのは、主人公が刑務所の中で恋人を思い出させる単語を457語リスト化したというエピソードである。なんかもう失笑しか出なかったけど、LBにはこの映画のクソな要素を457語で表している猛者もいたので浄化された。カンヌはショーン・ペンやヴィゴ・モーテンセン、マイウェン、過去にはゲイリー・シニーズやジョニー・デップなど俳優の監督作品を優遇する傾向にあるが、中身をよく観てから入れないと品位を損なうのでは?ちなみに、全然関係ないけど、俳優が監督した恐ろしく志の低い映画史剽窃映画『サイコハウス 血を誘う家』も併せて思い出していた。