ジェラール・フィリップの代表作がデジタルリマスター版

言うまでもなくジェラール・フィリップ俳優の美しさがこの作品を牛耳っているが、それに負けず劣らずの絢爛豪華な映像や衣装、舞台美術で、古き良き時代のフランス映画を堪能できます。

時代は1820年代。貧しくも聡明な青年ジュリヤン（ジェラール・フィリップ）は、司祭の推薦で町長の家で家庭教師として働くことになるが、彼はこの家のレナル夫人（ダニエル・ダリュー）に心を奪われ、二人は恋仲に。

だが、人並み外れた野心を持つジュリヤンはスキャンダル発覚で出世の道を閉ざされる事を恐れて、出世への近道である神学校へ進学する。

文学的な趣を感じさせる世界観だが、メロドラマのような展開で、エンタメ性に長けている本作。
禁断の恋を描いているだけに、テラスでの夕涼みしながら、旦那がいるのにテーブルの下でジュリアンがレナール夫人の手を握るシーンや、夫人がこっそりジュリアンの部屋へ向かうハラハラドキドキシーンなど、この手の作品だからこその背徳感を味わえます。

旦那がいながらどうしようもなくジュリアンに惹かれてしまったレナード夫人の想いは間違いなく不倫ではありますが、あの時代に地位も立場も全て捨てても自分の心には正直であろうとするレナード夫人の姿は、私の目には気高く美しく映りました。

愛した相手が危険すぎたわけだが、彼女は何一つ後悔はなかったのだろう。
フランスの階級制度の犠牲の中で生まれ、美貌と頭脳の両方を手に入れた故に、愛の欲望と野望のどちらかに振り切れなかったジュリアンの人生こそなんだか虚しく感じました。

【夢をなくした奈落の底に～♪】

ジェラール・フィリップという俳優を知ったのは小森のおばちゃまが書いた『ビデオで観たい「スター」ベスト100』という本だった。

そこで初めてフィリップのご尊顔を拝し、「ああ、こんな美男子がいたんだ」と思った。その時の写真が『赤と黒』でのジュリアン役だった（…のはず）

どうでもいいことですが、私と誕生日が一緒というのも親近感が一気にわいた。

さてこの『赤と黒』。美貌と知能と野心を兼ね備えた青年。ただ一点、下層階級出身だということで冷飯を食わされ続け、何とか這い上がろうと周りの人間を踏み台にし、やがて破滅していく様を描いた文芸大作。

スタンダールの原作は読んだことないけど、本屋で見かけると上下二巻の文庫本で結構な厚さだった。

その膨大な原作から映画化するのに苦心したと思うが、かなりモノローグを多用している。

原作の持ち味を損なわないようにしていると思うが、やっぱり台詞ばかりで処理しちゃうと映画としての面白さが足りない気がする。

あと本作は回想形式になっており、ジュリアンが裁かれる場面からスタートするが、法廷でジュリアンが訴える本作の肝の部分を早速ここで明らかにするのも勿体ないと思った。

ドラマのクライマックス部分に持っていった方が効果的ではなかったか。

それにしても市長夫人を演じたダニエル・ダリューの美しさ、そして高貴さに目を奪われてしまう。

個人的には前半のフィリップとダリューの不倫劇では集中力が続いたが、ダリューと別れて後半の公爵令嬢との絡みになってからはダレを感じた。

■映画 DATA==========================
監督：クロード・オータン＝ララ
脚本：ジャン・オーランシュ／ピエール・ボスト
製作：アンリ・デューチュメイステル／ジャンニ・ヘクト・ルカーリ
音楽：ルネ・クロエレック
撮影：ミシェル・ケルベ
公開：1954年10月29日（仏）／1954年12月25日（日）

ナポレオン没落後武勲による立身の希望潰えたフランスで、庶民階級の野心家青年が僧侶として貴族階級に食い入り、その美貌と才智を以て戦い、恋愛し、滅びゆく栄枯盛衰。周囲の貴婦人から見る青年の力強さと内に秘めた脆さ。軍服は赤で、僧服は黒。