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半落ちのNMのレビュー・感想・評価

半落ち(2003年製作の映画)
3.3
アルツハイマー認知症の妻に頼まれて3日前に殺したと、警部の梶が自首してきた。
しかし、殺害自体は認めるもののその後自首までに空白の二日間がある。それについてはなぜか一切口を閉ざしており、「完落ち」ではなく「半落ち」状態。
前代未聞のスキャンダルに、警察組織は、死に場所を求めてあちこちをさまよっていたのだ、と早々に片付けようとする。
しかしその供述では、取り調べの警部、検察、弁護士、新聞記者らはそれぞれ腑に落ちない。
梶がかたくなに隠している真相とは……?

重くて難しい作品だと思い込んでいたが、映画はとても分かりやすく作られていて、人物それぞれの立場もすっきりしていて意外にも見やすい。
逆にハードルを上げ過ぎるとシンプル過ぎて拍子抜けするかもしれない。

よくも揃えたというほどすごい俳優陣。これだけいればそう悪い作品になるはずがない。ちらっとしか映らない脇役も素晴らしい芝居をする。

おそらく小説はもっと人物たちの複雑な心理が描かれているのだろうが、それらの重要な部分を何とか2時間に収めたのだろうと感じた。
登場人物は多く、それぞれに割り当てられる時間は多くないが、その中で要点を絞って立場を明確にしている。

特に、これが初公判となる若い裁判官の藤林は、とても心根の優しい男に間違いないが、梶の考えを認めると、自分の父をも否定するように思えて、葛藤する。割とほとんどの人物が梶の事情に寄り添うなかで、彼だけがそれに反対する。その上であの判決を出すというのが、一番のみどころだと思う。

ラーメン屋の壁に、夏目雅子のポスターが貼ってあるのが上手いと思った。
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