【第37回東京国際映画祭　ワールド・フォーカス部門出品】
TVシリーズを中心に活躍するペドロ・マーティン＝カレロ監督作品。サンセバスチャン映画祭コンペに出品、東京国際映画祭ではワールド・フォーカス部門に出品されている。

アート系ホラーとして十分満足できる作品だった。時代を超えた三人の女性が遭遇するおぞましい体験を描いていく群像スリラー。

怪異の描写が秀逸。謎の老人に脅かされる様が気持ち悪くて良い。脅かすだけではなく胸に触ったり抱きついたりと性的要素も感じられより一層気持ち悪い。

よくあると言えばよくあるストーリーではあるが、ホラーの文脈をよく理解してつくられていると思う。何か斬新なものがあるわけではないが、こういうのもあっていい。サンセバというよりシッチェスとかに入ってもおかしくない。

ただ展開がワンパターンで観ていて飽きるというのは欠点だろう。演出が平板でメリハリがないので疲れてくる。もう少しテンポアップして語っていってもいいのでは。

決して完璧な作品ではないが、女性たちの連帯を描いた作品ともとれ、かつアート系ホラーとして一定のクオリティには達している。そこまで気に入った訳ではないが、東京国際映画祭でホラーというのはあまりないので連休最後をこれで締められてよかった。

• #第37回東京国際映画祭

東京国際映画祭が開催中、という事で、ラテン系ホラーを鑑賞です。
すでに他の国際映画祭で高い評価を得ておりますが、黒沢清監督作品を思わせる不気味さと、POV系ホラーの進化形という印象です。
つまり非常に怖かった…。
ヒッと観ているこちらの体も強張ってしまうシーンもありました。
それは光と影、時に闇の使い方が秀逸で、ストロボが効果的でした。
また恐怖の対象の存在の描き方が理屈を超えた恐ろしさがあります。
見える、見えない、ということがあまり関係なく攻撃してくる恐ろしさ。
恐怖と対峙することになる女性主人公たちの葛藤は複雑な構成の中で、掘り下げられます。
理論や理屈を超えたところにある恐ろしさですね。

• #TIFF2024

映像にしか映らない（ほとんどの他人には実感してもらえない）、でもたしかにそこにある恐怖。それが世代を超えて女性たちに継承されている。

今作がテーマにしたのがストーカーの恐怖なのか、男性の暴力性・性加害への恐怖なのか、支配的な人間への恐怖なのか、それらすべてなのかは具体的に明言されない。しかし、被害の訴えが男性や第三者に信じてもらえない間に大事になってしまった事件は数多く存在するだろう。

今作は緩急巧みにゾクゾクさせるホラー映画としても爪痕を残しながら、確実に“つきまとう視線”の恐怖を描き抜いている。ちょっと強引なボーイフレンドや、そんな彼にさえ迫る魔の手といった展開が、時に“邪魔な男性”にさえ牙を向くストーカー・性加害者の暴力性を印象づけた。

現代パートではショートメッセージがモダンなフォントで画面に躍り、過去パートでは若干粗めの映像がノスタルジックになるなど、台詞での説明を省き、時代をわかりやすく観客に体感させるこだわりも見られる。建物の映し方だけでどんよりとした陰湿な圧が感じられる撮影も印象に残った。

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観た回数:1回
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【星つけた際の"個人的"評価・好み】
※作品のウリじゃなさそうな部分、判断しにくい部分は「-」
総合点79pt/100pt　星換算★★★★4.0

95=スタンディングオベーション/90=大拍手/80=最高！/70=すごい！/60=良い/50=不足なし/40=あと一歩欲しい/30=うーん/20=さすがにちょっと/10=Z級

《配点》

好み（個人的なただの好み・印象の強さ）
　85★★★★☆
監督（コンセプト・元ネタ・主題・固有演出）
　87★★★★☆
脚本（設定・起承転結・言葉・脚本のテンポ）
　83★★★★☆
撮影（構図・カメラワーク・撮影での映像美）
　79★★★★
演技（演技力・役作り・演技のインパクト）
　74★★★★
編集（カット・編集でのテンポ・音ハメ）
　75★★★★
音響（録音・音響）
　76★★★★
音楽（サントラ・歌曲）
　78★★★★
美術（キャラデザ・衣装＆メイク・セット）
　75★★★★
配役（キャスティング）
　77★★★★
VFX（VFXのクオリティ・VFXでの映像美）
　80★★★★

• #つくね用:2024年製作
• #つくね用:2024年公開
• #つくね用:ホラー
• #つくね用:スリラー
• #2020年代前半のホラー・スリラー
• #つくね用:2024年劇場鑑賞