たにたに

ファーゴのたにたにのレビュー・感想・評価

ファーゴ(1996年製作の映画)
3.5
【完璧な推理力】2022年7本目

今作にて、フランシス・マクドーマンドはアカデミー賞主演女優賞を獲得。
彼女の登場は物語の第2章辺りから。

彼女の存在感も素晴らしいが、どちらかと言うと、ウィリアム・H・メイシー演じるランディガードが、感情を隠し切れず表情や声に現れてしまう素人感がたまらなく面白くて印象的である。
仕事もめちゃくちゃいい加減だし、言い訳ばかりだし、家族まで巻き込む糞野郎であることは間違いなく、お義父さんや顧客対応からもランディガードの小物感が見てとれる。よくもまぁ営業副部長にまで上がれたなぁ。眼力だけ異常に強い。

◉物語は非常に残酷な殺人劇、しかしどことなくコメディ感漂う

ランディガードの共犯者となる、二人組の男。1人は大男で、1人は変な顔の男。
劇中にも、"変な顔の男"という目撃証言が多数登場し、ホームアローンの世界から飛び出してきたようなインチキくさいキャラクターにコメディ味を感じる。
対して、大男は冷酷無比で、無口でクスりともしないサイコパス人間。この男が登場することによって、観てる我々は事の深刻さを再確認する。

さらに、雪景色が一面に広がっていることにより、画面が白く明るい印象のため、ミステリーとはいえども胸糞悪さなどが残らないのも特徴だ。

◉やり手女性警官
フランシス・マクドーマンドは、犯行現場から瞬時に、犯人の特徴や犯行の概要を見極める。コナンや古畑任三郎並みに、洞察力が秀でているのだ。

この作品の楽しみ方が、難しいなと感じるのは、犯人が既に分かっていて、オチが見えている事。
彼女が、いかにして犯人と対峙するか、がメインかと思いきや、あっさりと逮捕となり物語は終える。

実話を元にしているので、話をややこしくせぬようにシンプルに描くのが正しいとは思うが、満足感的には微妙なところ。

そう考えると、この作品の面白みって、フランシス・マクドーマンド演じるマージの生き様なのかなと思う。

早朝の電話にも怒らない。
旧友の突然の告白にも動じない。
夫の切手デザイン採用についても、一歩先を行く考え方を持っている。
犯人にパトカーの中で、人生の先輩として軽く説教をする。

ここを理解できれば、この作品への深みが増すんだろうな。
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