horahuki

間違えられた男のhorahukiのレビュー・感想・評価

間違えられた男(1956年製作の映画)
4.1
それでもボクはやってない!

久々のヒッチコック。そんなに多く見てるわけでもないのだけど、基本どれ見ても面白い品質保証されてるようなもんだから、見てる時の安心感が凄いし、実際に面白いからほんと凄い!

あいつ強盗に顔が似てるよね?という言葉のせいで冤罪で捕まるお話。「私はこう思う!きっとそうだ!」的な根拠もない素人考察のノリで、何の責任もなく人の人生めちゃくちゃにして遊んでるオッサンたちの素晴らしいお仕事ぶりに身震いした。強盗と似てるって言い出した言い出しっぺ集団にだけ面通しする出来レースは何なんやろね。

「どこにでも居る普通の男」って言ってしまったらそれまでなんだけど、それ以上に形容しようがないほどに普通の男が何の非もないのに人生をメッタメタにされるまでを描く。妻と子ども二人が居て、多くはない給料で慎ましく暮らし、休日は家族孝行、そして些細な趣味を持つ。そんな平凡な男が妻のために取った行動で地獄へと転落する…怖すぎる😱

簡易版『知りすぎていた男』と言っても良いようなサスペンスを一点に集中させるヒッチコックらしい演出が序盤から光り、過剰な演技ではなく、役者の表情の機微によって抜け出せない地獄へと墜とされていく絶望に観客を違和感なく同調させていくのが凄すぎる。そして「堕ちた」空間を改めて認識させることで一気にその実感をドスンと振り下ろし、顔のアップとの切り返しと自分が自分から遠のいていくかのような『めまい』的なアレが現実からの乖離的浮遊感を観客に与え、それをもって同調を決定づける。

中盤あたりはテンポが悪くなり過ぎていて飽きてきたのだけど、クライマックスは流石の演出力で、これをやるためのタメだったのかと納得。不安と恐怖をたたえた表情と机の下でしっかりと持ち続ける僅かな希望。その2つで行き来する彼の心情の天秤が次第に一方向へと大きくかたむき出す。自分を犯人だとする証言の積み重ね、自分に聞こえないように何かを話す味方であるはずの弁護士と傍聴人、それらと彼のアップの切り返しが、「自分は無実だ」という自分が最も良く知っているはずの絶対的な「事実」すらも揺るがすほどの心的圧迫を与えてくる。何というか洗脳に近い感覚。そしてそこから生まれる究極的な自己否定。弁護士に「もう一度最初からだけど、耐えられる?」って質問されるシーンがあるのだけど、あまりの同調力のためか、画面越しに見てるだけの私が一番「無理無理!」ってなった…😅ヒッチコックすげぇわ。

GWで暇なので、マジで朝起きてから映画見てフィルマやって…な生活になっちゃってます😅GWで何本見れるかな?😂
horahuki

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