愛を受けなかった青年の末路

奇天烈な描写が癖になる。
自慰行為のシーンがかなりグサッとくる

イタリア人とパキスタン人のハーフである監督の作品。
彼はこれまで、短編やドキュメンタリーなどを手掛けてきたという。
本作内にはモノクロの美しい映像が連続。
監督はまだ40代だが、80年代ポストパンク感覚との親和性が高い。
また全体的にアート映画の趣でありながら、ドラマツルギーを完全に拒絶している様子でもない。
悪く言えば中途半端なその制作姿勢、新世代としての個性と言えるのかも。

作品内では、ショタコンの犠牲となった少年が、青年に成長してからの生態が描かれていく。
単純な救済物語でないところが、リアルかつ残酷…、監督は制作にあたり、多くの人の性体験をブリフィングしたらしい。
その中には「犠牲者の中に、虐待を愛のかたちと信じ込んでしまう人がいる」という意見が、含まれていた様子。
なるほど本編内には「ヘリウムガスを吸引し、声を変えてまで小児性愛者に接近する」、「幼児に接近する」、「かつての虐待者に手をかける（青年になった自分を省みないから）」、そして「海辺で拾った木の枝をアヌスへ挿入する」といった主人公の奇行が、数多く挿入されていた。
世捨て人のように暮らす彼を庇護する、親や教育者の姿が見当たらない設定は強引だが、正しい性教育を受けたとは思えぬ彼が垣間見せるグロテスクな行動そのものが、虐待の悲しげな告発として、機能していた。
また無防備な生き方が、異なるタイプの倒錯を惹きつけた挙句、カタストロフィを誘発する可能性も、示唆されている。

記録