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KIDS/キッズのmazdaのレビュー・感想・評価

KIDS/キッズ(1995年製作の映画)
3.9
ラリークラーク×ハーモニーコリン×ガスヴァンサントっていう最強タッグで、あまりにリアルすぎるストリートKIDSを描いた映画。
この3人が作るティーンズ映画、観る前からぶっとんでるのが約束されてる感じ、強烈な印象を抱かせる。ものすごく観たかった映画。ようやく観れました。

余計な要素を全部はぶいて、忠実にリアルに彼等の日常を描くことと、そんな安易で軽々しい行動の中に潜む取り返しのつかない現実だけに重きを置いて作った感じ。すごくシンプルなのにそのメッセージのインパクトはとてつもなく大きい。最初から最後までドラッグとSEXなので比較的短い作品なのにものすごい疲れる。
目の前で起きてることや、自分たちがしてることに対して「いいこと」「わるいこと」という区別が、彼等の世界にはそもそも最初から存在していない。彼等に1番しっくりくる言葉は『やばい』。もともと悪い意味で使われてた言葉だけど、今は発し方受け取り方でどちらの表現方法にも使える。彼等のあらゆる行動、彼等そのものにあてはまる言葉だと思う。
どんなに外見を変えても大人みたいに振る舞っても、内面の成長にはやっぱり時間がかかる。精神的に子供っていうよりも、純粋な子供の感覚がまだ残ってる。やってることは人としてものすごく汚れているから、表面だけでみれば純粋の欠片もないのだけど、その行動や感覚がどこからきてるのかを考えた時、それはキラキラした無邪気な子供と何ら変わりないのだと気づく。『若い時は自分の好きなことしか考えない』という彼等は、サッカーに夢中な少年や、オシャレやメイクを楽しむ少女とまったく同じようなこどもなのだ。

ある意味こういうのを無垢というのじゃないかと思う。その先どうなるかなんて誰1人考えていない、恐怖なんて誰も感じていない。自分の感覚を信頼しきっていて、何よりも自分の欲深さを愛しそれに応えたいんだろう。未来の自分がどうかより、今の自分にとってどうあるか。ただ直向きにまっすぐ。大人になって考えれば、どう考えても間違ってるだろうと一瞬で気付けるのに。余計なことを考えない、純粋すぎる故の過ち。終始描かれた欲望の先にある、ラスト5分は絶望しかない。
たくさん失敗をしてきた大人、もうたくさんは失敗できない大人、そんな私たちには、恐れを知らない無敵な心が何よりも怖いのかもしれない。
90s'の空気感、スタイル、最高に好き。ストーリーも世界観も思いっきりクラーク、コリンって感じなのに、わかりやすいメッセージ性と、これだけ自由奔放にやっといてしっかりした着地ができてるのは指揮がガスだからかな。やーなんて『やばい』映画なんだろう。この3人で作る映画、もっと観たい。
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