きまぐれ熊

ビッグ・リボウスキのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ビッグ・リボウスキ(1998年製作の映画)
3.8
悪くない。
なるほど、チェンソーマンへ通じるメッセージ性あるわ。
コーエン兄弟作品初めて見たけど刺さる人に深く刺さる作風なのは強く感じる。

OPパロディの元ネタを巡るツアー1発目でこれを観たんだけど藤本タツキイズムあるというか、好きそうだな。

ストーリーの本筋だけならシンプルで、富豪の妻の身代金の受け渡し役に任命された無職中年デュードが巻き込まれたあれやこれやを巡るハードボイルド的サスペンス。
の様で、サスペンスが主題じゃないんだよね。
「ロンググッドバイ」や「大いなる眠り」などの古典ハードボイルド小説が下敷きにあるパロディとのことなので、まともに筋を追いたい人からするとデュードとウォルターのグダグダ会話にイライラする事請け合い。メイン2人の会話が飛び抜けてしょうもない。

カルト的人気があると言われているのも納得な空気感。キャラクターは主役以外も変人博覧会のようなヤバい登場人物たちしかいない。翻ってデュードが常識人に見えてしまうレベル。

特筆すべきセンスを感じるのは物語の切り取り方。
筋書きはサスペンスの様でいて、どう考えても枝葉のしょうもない会話ばっかりに時間を割くし、友達のウォルターもダニーも会話が成り立たないし、3人の会話が8割くらい今なんの話してる?状態。なんだけど、むしろそこがメインフレームの日常ものなんだろうな。人生の切り取り方がうまい。

ラストは理不尽すぎて、なんでだよ〜と思ってる間に来る酷すぎるオチがくだらなくてうっかり笑ってしまう。

キャラクターたちの関係性に湾岸戦争の比喩があったり、最終的に身代金のケースの行方が分からずじまいであったりと、見た目のユルさと裏腹に一見しただけでは分からない情報の埋め込みが多く、しっかり理解するのには結構難易度高め。
だけど、表面的なダメおじさんたちの空気感だけでも悪くないので特に分からなくても楽しめる。
きまぐれ熊

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