シズヲ

決断のシズヲのネタバレレビュー・内容・結末

決断(1958年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『ハングマン』の異名を取る頑固な連邦保安官補が法と人情の狭間で揺さぶられる西部劇で、穏やかな情感に溢れた秀作だ。派手な銃撃戦のようなアクションが殆ど無く、専ら刑事物のような地道な捜査や登場人物のドラマが話の半分を占める異色の内容になっている。80分前後という短い尺のおかげでさっくりと見れるし、適度なユーモアを交えた熟れた作風が程よいテンポを生んでいる。

本作の骨子を成すロバート・テイラー演じる主人公のドラマがやっぱり秀逸。法秩序を重視して冷徹に勤める主人公を情に従うヒロインや町の人々が阻んでくるという構図が新鮮で面白いし、そういった流れを通じて人間の善性を否定していた主人公が心境の変化へと至る流れが清々しい。主人公の捜査自体は間違っていない(犯人の目星は正しい)という事実で彼が単なる偏屈な保安官ではないことを示し、また序盤で人情に希望を持ちかけるという「心の奥底では善性を信じたがっている」とも取れる描写を入れることて心情の変化を自然な流れにしていたのが上手い。

ヒロインも役者であるティナ・ルイーズの美しさも相俟って魅力的で、主人公の価値観を揺るがす存在の筆頭としてもしっかり機能している。それまで容疑者を巡って反発し合っていた二人が終盤での相互理解と「決断」を経て最後に結び付く流れは印象的。生まれ変わることを決意した男の孤独に寄り添うヒロインの愛情が高潔で美しい。梯子を下ろされて「え?」って顔をしていた町の保安官はちょっと可哀想だったが、最後は明るく見送ってくれたので結果オーライだ。
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