茜

ウイラードの茜のレビュー・感想・評価

ウイラード(1971年製作の映画)
3.3
銭ゲバネズミは嫌いだけど、殺意の波動に目覚めたネズミは好き♪

アニマルパニック物の先駆け的作品。
まだCGという技術の存在しない70年代に、何百匹もの生きたネズミを用いてうじゃうじゃ蠢く不気味な場面を作り上げている。
大群で人間を襲うシーンでは俳優の身体にネズミの好物であるピーナッツバターを塗りたくって撮影したとか何とか。
ネズミが人間に飛び掛かるところなんかも、明らかにスタッフさんが放り投げてるんだろうなーと丸わかりな感じが何とも微笑ましかったり。

表向きのストーリーは、社会不適合の青年と人間に忌み嫌われるネズミが手を組む復讐ドラマ。
個人的には登場人物の誰にも共感出来なかったので、常時ふわふわした気持ちで観てました。
過干渉な母親やパワハラ社長など主人公に同情する箇所もなくはないけど、彼自身も未熟過ぎるし、そこが本作においての重要点と言えそう。
元々はチヤホヤされて育った富裕層のお坊ちゃまで、仕事の時間も納期も守れないくせに待遇への不満だけは一丁前、表立った反抗は出来ないけど内面は我儘で身勝手なクソガキのまま。
そんな主人公だから、当初は心通い合っていたかに思えたネズミ達との間にも当然のように歪が生まれてくる訳で…。

単純な復讐ものでは終わらない、様々な考えを巡らせてしまう味わい深い映画。
終盤にネズミのベン君が見せる怒りの表情がすっげー印象深くて、人間より強烈な演技力かましてくるもんだから笑った。
茜