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ウイラードのhorahukiのレビュー・感想・評価

ウイラード(1971年製作の映画)
3.9
いつも社長に怒られてる主人公ウイラード。社長のマーティンは、ウイラードの父親が起こした会社を乗っ取って経営しているので、憎さ倍増。家では母親が寝たきりで、27歳にもなったウイラードを小間使いのように使ってくる。しかも愛情過多。友達もいないし金目当てな連中しか周りにいない。そんな中、ウイラードは庭にいたネズミを飼い始め…という話。

ネズミがいっぱい出てくるネズミホラーです。
主人公のウイラードくんはネズミが大好きで、ネズミと一緒に暮らすうちにコミュニケーションが取れるようになっちゃいます。ウイラードくんに懐いて戯れてるとことか、命令通りに健気に働いてくれるネズミを見てると可愛く思えてくる不思議。この可愛いネズミたちを使って、ウイラードくんがムカつく奴に復讐しようとする話です。

ウイラードもネズミも、社会に虐げられ片隅に追いやられている弱者同士。だからこそ彼らは共鳴し、一丸となり権力に対して牙を剥く。でも弱者が強者を打ち負かす単純な痛快ストーリーとしては描いていないのが面白いです。

中心にあるのはウイラードの精神的未熟さ。無駄に大きな自宅も父親の会社もネズミとの関係も、外に向こうとせず頑なに内に閉じこもろうとするウイラード自身の幼さを表しているように思います。母親の死という転機があるんですけど、そこからは「大人」としての対処法があったにも関わらず、ウイラードが選択するのは「子供」的な対処法。虐げられ抑圧され続けたことの反動からか、最後まで自己中心的な行動へと走ってしまう…。

そして凄いのがネズミたちの演技です。マジで大量のネズミを調教したらしいですね。ソクラテスとベンという2匹の主役級ネズミがいるんですけど、本当にウイラードと仲よさそうに見える!しかもベンの表情が凄すぎます。ネズミが表情の演技をするなんて…あれどうやってんすかね〜。本作のベンは動物アカデミー賞受賞間違いなしです。

あとネズミに惹かれていくところが、病的なところもあって、なんとな〜くサキの『スレドニ・ヴァシュタール』っぽく感じました。あっちはイタチだし、やってることは全然違うんですけどね。評価はそこまで高くない作品ですけど、個人的にはかなり面白かったです!この作品ずっとディスク化されてなかったようで、今回のBlu-rayとDVDの発売・レンタルはマジでナイスです♫
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