円柱野郎

女囚さそり 701号怨み節の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

女囚さそり 701号怨み節(1973年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

「女囚さそり」シリーズ第4弾。
逃亡生活を続ける松島ナミはそのさなかにヌード劇場の照明係・工藤と出会い隠れ住む。
学生運動の過激派で過去に公安から拷問を受けた工藤にある種のシンパシーを感じるナミだったが、そこへも警察の手が伸びてくる…。

前作から5カ月後に公開された続編。
監督が前3作の伊藤俊也から長谷部安春に交代して、今までが時代劇風な復讐劇だったとしたら、本作は若干作風が刑事ドラマっぽい感じになった印象。
元々反権力志向な作風のシリーズではあったものの、犯罪者目線での警察を敵として描くためか本作はさらに警察の暴力や横暴さがより強調されていて、イメージ的には戦前の特高かよと思わんでもない感じだわ。
まあ取り調べでの拷問は(ドラマ的には)ありだろうけど、刑務所の看守長を寄ってたかってレイプする刑事どもってのはさすがにすごい場面だな。

ここまでのシリーズは内容的にも「女の復讐」という表現が強かったけれど、本作は闘争してきた工藤の過去も絡めた権力への反抗や児玉警部との因縁が前半の主軸になっているので、余計に今までと毛色が違う印象になっているのかも。
犯罪者と警察との対立構造の方がテーマとしては強めだよね。
ナミと工藤が警察の現金輸送車を襲う前後なんて、なんとなくボニー&クライド的な雰囲気すらあるもんなあ。

まあ前述の通り看守長がレイプされたり、女性の理不尽な被虐場面もあるのだけど、結局ナミの復讐がそういう部分とは関係なく自分を警察に売った工藤に対するものだけで終わってしまうのもちょっと物足りない。
児玉警部とナミの決闘シーンは、そもそも児玉警部が死刑ではなく私刑による絞首にこだわる部分がストーリー的にはあまりスマートではなかった気がする。
悪辣なキャラクターとしての描写なんだろうけど、ナミはどっちみち死刑になるはずだったのに工藤はそこまで手をかけてお手製の死刑台に送りたいものなのかなあ。
そりゃ児玉は奥さんを殺されてるけど、手口にやりすぎ感の方が強くて逆に嘘くささとして鼻についたというのが正直なところ。
そうだなあ、ナミと工藤は意図していなかったとはいえ(悪人ではない)児玉の奥さんを殺しちゃってるから、それもあって両者に共感しにくくなったのかもしれない。

松島ナミ役の梶芽衣子は本作がシリーズでの最後の出演。
工藤役は田村正和で、ヤサグレ感のある二枚目キャラとしてはやはりオーラはある。
ちょっと目元のメイクが濃い?なんて思ったりはしたけどねw
児玉警部役は細川俊之で、狡猾な刑事にバッチリハマっていたかな。

東映としては本シリーズがいったんこの4作目で区切りになった一方、同年に「仁義なき戦い」シリーズが始まっていて、改めてプログラムピクチャーに存在感のある濃い時代だったのだなと感じる。
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