鼠小僧よろしく金を巻き上げ不幸な生い立ちの人間にお金配りニキしている青年の復讐劇。ものすごく早くてものすごく遠くてものすごく面白い。父親が背後から撃たれるあの一瞬の悲劇の撮り方凄過ぎる。ペッシー・ラヴもただただか弱い女の子というだけでなく、自ら銃を拾い挙げ銃弾を放ってみせる、にしたって帽子をめぐるやり取りが可愛いが。桃白白戦の悟空よろしくペンダントが凶弾から命を救う、この描写の元祖ってどこなんすか誰か有識者。

俯瞰ショットが素晴らしいし悪党/警護団入り乱れるクライマックスに突如、小動物(子犬？)が数匹横切っていくカットが凄い。縦方向への前進運動が途切れ、逃走側と追跡側の間を駆け抜けていく横の動きに理由もなく感動させられる。ヒロインや救出劇はグリフィスすぎるが、復讐心で展開が広がっていく豊かな脚本は西部劇のそれ。舐めプ投げ縄、帽子で交わされる愛の表現、銃弾から守ってくれるペンダントなど細部の演出も気が利いている。

【詳述は、『民衆の敵』欄に】底知れぬ、簡潔で張りつめ、無意識の真の現実以上の切り詰めた緊密の世界の誕生･繋がりへ向かう、押し付けなく気づかせぬ奇跡。