backpacker

X-MEN:ファイナル ディシジョンのbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
◾︎X-MENシリーズ第3作

【作品情報】
公開日   :2006年9月9日(日本)
作品時間  :105分
監督    :ブレット・ラトナー
製作    :アヴィ・アラッド、ローレン・シュラー・ドナー、ラルフ・ウィンター
製作総指揮 :スタン・リー、ジョン・パレルモ、ケヴィン・ファイギ
脚本    :ザック・ペン、サイモン・キンバーグ
音楽    :ジョン・オットマン
撮影    :ニュートン・トーマス・サイジェル
出演    :ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ハル・ベリー、ファムケ・ヤンセン、ジェームズ・マースデン、ブライアン・コックス、他

【作品概要】
『X-MEN』シリーズオリジナル3部作の完結編。
前作後「3作目はもっと凄いもの作るぜ!」とぶち上げていたブライアン・シンガー監督(その時点では4作目まで構想していたらしい)。
残念ながら、そのシンガー監督が『スーパーマン リターンズ』製作のために本作を離れ、ついでにサイクロップス役のジェームズ・マースデンも連れて行ったため、製作現場は崩壊。
マシュー・ヴォーン監督に白羽の矢が立つも、タイトな製作スケジュールに併せて納品するのは不可能と判断し、降板。(ヴォーンはこの後『X-MEN フューチャー&パスト』にて監督に抜擢されている。)
代わりに選ばれたブレット・ラトナーは、納期厳守可の所謂職人監督。多くの無理を無難にまとめあげ、作品は無事公開となった。
なお現在のラトナーは、女性俳優へのセクハラ問題であまり表に出てきていない。

【作品感想】
X-MENオリジナル3部作、ここに完結!
ミュータントの"治療"を目的とした薬〈キュア〉を巡る対立を軸に、前作にて死んだと思われたジーン=最強のミュータント・フェニックスの復活を絡め、第1作から登場してきたキャラクター達それぞれの気持ちに、折り合いと妥協点を与える作品となりました。
ただし、決して大団円ではございません。

と言うのも、第1作から散々提示されたアレコレの課題は、さも全部解決したかのような一件落着風の雰囲気で着地してはおりますが、実際は多少改善は見られど程度で、根本的解決等には至っておりません。あくまで、「将来に希望を持つことができる可能性が高いルートに入った」状態。
その上、個々人が抱える問題や葛藤についてはある程度の決着を見せましたが、肝心の主人公ローガン=ウルヴァリンが持つ苦しみは遂に解消されません。

ローガンの根源的行動原理は、失われた過去(記憶)を取り戻すことにあります。
その点については、最大のキーマンであるストライカー大佐と、前作終盤で問答した末、彼を見捨て若いミュータント達を救う道を選びました。
過去(ストライカー大佐)と訣別し未来(若いミュータント)を見始めたローガンは、その直後、決して思いを通じ合えないと理解しながら、それでも愛していた女性ジーンを喪います。
この展開を踏まえれば、続き(本作)でのローガンには、未来思考に必要ないくつかの支えのうち、最も重要かつ希望たる存在を失ったことへの失意と、そこから立ち直る姿を見たいと期待してしまうところ。

しかし!本作のローガンは「心すらすぐに再生するんだな」と言い放たれてしまうくらい、ジーンが死んだ事を受け止めようと最初から努力しているうえに、恋敵であるサイクロップスの心情を斟酌し思いやる度量まで見せます。
一体いつの間にここまで精神的に成長したんだ!?と思うほど落ち着き払っていて、驚きしかありません。
当初の戦闘訓練では協調性の欠如を感じさせるも、最後には誰よりもリーダーシップを発揮。こんなんただのツンデレやんけ。
さらには、蘇り荒れるジーンを救うことも、プロフェッサーの意思の継承も諦めない。
そして最後は、自らの"爪"で愛する者を手にかける。その失意はいかばかりか……。
……って、どうしたローガン!?お前凄いな!完璧にヒーローだよ!!

オリジナル3部作を見返して、「根無草の孤独な獣が、拠り所と頼れる存在を見つけ輪に加わり、そのコミュニティを守るために戦う」という成長譚だったんだなぁと、しみじみ思います。
まあ、拠り所が崩壊寸前に追い込まれた前作と、頼れるスキンヘッド親父が眼前で文字通り塵となって散り、愛故に愛する人を殺した本作を考えれば、切なさばかりが溢れますが……。

前作よりも20分も短くなったのに、盛り込まれる要素は多くなったことと、前述のシンガー降板騒動の弊害故に、全体的に浅い内容の感は否めません。
ラストバトルの引きの絵のチープ感も正直悲しい。
しかし、難しい状況を巧みにまとめ上げ完結にこじつけたブレット・ラトナーの手腕は、実にお見事。

映画X-MENの本流たる三部作、改めて、面白かったですね!
backpacker

backpacker