マンボー

ファンタジアのマンボーのレビュー・感想・評価

ファンタジア(1940年製作の映画)
3.7
1940年製作のクラシック音楽の名曲と、ディズニー独特のアニメーションとを組み合わせた実験的オーケストラ・アニメーション。

ようやく観た。手塚治虫といえば、大ファンだったディズニーアニメの中でも、何十回も観たと言われる「バンビ」と「白雪姫」、そして自身もピアノを見事に弾きこなし、クラシック音楽にも精通しており、本作をも特に愛好していたと何かで読んでいたこともあり、本作はいつかちゃんと映画館で観たいと思って、あえてビデオやDVDで見ることを拒んできたので、その日、映画館に向かう足は踊り、胸は泡立って、本作を映画館でとうとう観られる喜びに心ひそかに打ち震えた。

特に後半一曲目、ルードウィヒ.B、ベートーベンの「田園」と、ギリシャ神話をなぞらえた大河アニメーション。そして最後の「展覧会の絵」で有名なムソルグスキーの「はげ山の一夜」の悪魔や魔王の造形と描写が新鮮で、昔のアニメやデビルマンの造形などにも影響を与えたのかな等と考えているのも楽しかった。

全体に、今から80年以上前に製作された作品のため、やはり古さは否めないし、数曲のクラシック音楽に、それぞれ別のテーマのアニメーションをあてる独特の試みということもあって、物語に没入し続ける感覚はなくて、熱狂的な気持ちにはなりにくいが、製作時の試行錯誤により、素材やエッセンスが磨かれて、研ぎ澄まされていったことが伝わってきて、アニメーションはよく動いているし、何より豊かなアイデアの宝庫にして枯れない源泉。その価値が未だに色あせきらず、現在でも存在意義を保つ作品の素晴らしさがあった。