マンボー

ひらいてのマンボーのレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
4.0
公開前は全く興味が無かったのに、公開当日、たまたま仕事が休みで、本作の評判がなかなかよく、よく行く映画館でかかっていたので、ガラでもないのに封切日に若い客層の中で鑑賞したのが、今や懐かしくも小っ恥ずかしいような気にも。

女子高生版ピカレスクの斬新さの衝撃。
計算高くてずる賢い策略家で、黒々とした身勝手な欲望の中に、率直で純粋、奇妙に本能的な欲動をも感じられて、さらに主人公本人もそんな自分の罪に無自覚なようでいて、実は潜在的に自覚しているのか自分への肯定感が薄らいで、何もかも不安定になり、堕ちゆくさまのリアルさまで描かれていて、やり過ぎでめちゃめちゃなストーリーなのに一笑に伏せず、主人公のエネルギー、欲望、欲動に引っぱられ続ける一種極端で強烈な物語。

主人公は策略家で空恐ろしいのに、策略の底に奇妙なほどに無垢な純粋さを秘めているから、どうしても憎みきれずにもどかしく、だからこそいつまでも彼女の行動に引きずられて、引っ張り回される感覚はあまり感じたことがないような。

この不快かつ極端、強烈な物語をかたりつつ、こちらを飽きさせも呆れさせもせず、目をみはらされて物語や主人公の行動に共感できないのに、どこか感心させられる物語のその演出、演技、存在感の見事さには、やや不覚な思いに囚われながら、それでも一定の敬意を抱かざるを得なかった。

本作は映画の鬼っ子。ところが存在しなくても構わない作品などではなく、こんな作品もあるから物語は、映画は、創作はやっぱり面白いんだと思える稀有な作品だった。