マンボー

いとみちのマンボーのレビュー・感想・評価

いとみち(2020年製作の映画)
4.0
最近多い、地方が舞台の作品の中では、屈指の秀作。

津軽三味線とメイドカフェ、器用に仕事をこなす女の子と、まるで不器用な女の子、経験豊かでしっかりした女性と、正反対の女の子等、一見ミスマッチにも見える意外な要素を、互いを引き立て合うように上手に組み合わせ、物語の進展とともに相乗効果を生み出す技法が随所に配され、さらには徹頭徹尾、社会弱者に対してあたたかい見方が貫かれていて、物語が進むにつれていつしか満ちゆく、ほのかな安心感が心地よかった。

また特に、メイドカフェのメイドの女性たち、それぞれの背景や個性の輪郭と奥行きがきちんと描かれていて、ときに相容れないように見えたものが、いつしか同じ方向を向き出すという、ありがちながら力強い進展を追い風に内外の困難に立ち向かううち、自分に自信を持ちきれない若いヒロインが、いつしか自我に目覚めてゆくその過程を自然に描いていて、好感を持った。

本作は多分、原作がいい。そしてメイドの三人の女優諸氏がそれぞれにいい。青森、津軽の古さと新しさが混在した景色や方言等もいい。
どうも少し地味な作品だと思われそうだけど、観ればその良さに気付く人はきっと多いに違いないと思う。