ぎー

ヒックとドラゴンのぎーのレビュー・感想・評価

ヒックとドラゴン(2010年製作の映画)
4.0
【第83回アカデミー賞特集1作品目】
"会えばきっと、好きになる"
映画の中で人とドラゴンは相手のことを理解しようとする努力もしないで争ってばかり。
現実世界もそう。
でも、触れ合って相互理解すれば、もしかしたら争う必要はないかもしれない。
そんな普遍的なメッセージを子供から大人まで楽しめる、よく出来たテンポの良いストーリーで心に訴えてくる傑作だった。

前例や伝統をそのまま伝承する者が、力をもって相手に相対する者が、必ずしも勇敢なわけではない。
実は前例や伝統に抗って正しいと思う道を進む者こそが、力を行使するのではなく相手を理解しようとする者こそが、勇敢なのかもしれない。
本作の主人公ヒックはまさにそうだ。
物理的に強い者が正とされ、長い年月にわたってドラゴンと戦い続けてきたヴァイキングの世界で、違う道を進んだ。
僕らは映画を客観的に見てるから、ヴァイキングの首領たるヒックの父はなんて頭の固い奴なんだと思ってしまう。
しかし現実世界に置き換えてみたときに、いかにそれが難しいことなのかに気づく。

物語だけでなく演出も素晴らしい。
それぞれに個性を持った多様なドラゴンが登場して楽しいし、戦闘シーンの迫力や空を飛ぶ場面の疾走感は素晴らしい。
演出もよく出来ているので、上映時間は本当に一瞬に感じる。

様々な要素がよく出来た映画であるが、主人公ヒックとドラゴンのトゥースの友情関係は特に涙もの。
お互いを恐れ敵として認識していた出会いから、お互いに歩み寄って信頼関係を醸成し、最後は自分の身体を張ってでも相手の命を救おうとする。
たった一本の映画の中での道のりではあるが、テンポ良く丁寧に描かれているため、心に響く。
タイトルからして子供向けの映画かと思いきや、大人も心の底から感動できる、全ての人に向けた本当の傑作だった。
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