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イレイザーヘッドのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

イレイザーヘッド(1976年製作の映画)
4.5
人間が見る悪い夢をそのまま具現化し映像にして、極限まで日常を異様な感じで映し出した作品。

リンチのデビュー作であり、リンチ本人が、映画会社の人から口出しされず、自分のアート性とシナリオを存分に発揮できた、最高傑作と語っていた本作。

個人的には数少ない「トラウマ映画」の一つで、「悪夢」を視覚的にそのまんま見せられ、よくわからないブツ切り状態で目が覚めた感覚。
こんなに異様で、トリッピーな映画体験は、後にも先にも味わえないと思う。

全編通して、フィラデルフィアの鉱業音のインダストリアルノイズのクラクラするような不快感(褒めてます)。
登場人物全員ラリってるかのような、話の通じない感じ。

赤ちゃんの奇怪なビジュアルと顔面が膨れ上がった美女など、リンチワールド全開で恐ろしいもの観たさに、つい何度もリピートをしてしまう。

ロッキーホラーショーやエルトポと共に、映画にカルト的面白さを提示し、ジャンルを生み出した、まさにビザール怪作の代表格。

特に、メアリーの家での会食シーンは、ホントに恐ろしく、強烈。
突如奇声を上げるメアリー、フリーズする父親、チキンの気持ちの悪さ。

しかしこの場面含め、映画全体が主人公の主観になっているという部分。

リンチ映画では、毎回のあるあるだが、実際は、ごく普通の日常だけど、主人公の目から見たら、異様な世界に見え、赤ちゃんも奇形に見えたというだけ。

フィラデルフィアの環境や赤ちゃんを若くして授かるという設定は、リンチ自身の実体験であり、彼の持つ未来への不安が、この強烈な映画を生み出した。


モノクロというより、ほとんど黒のイメージの強い、銀残しのような印象の映像を駆使し、「夢」のはっきりとは見えない感を表現できてて素晴らしい。

ストーリーの支離滅裂な所も断片的にしか、思い出せない「夢」の感じや、唯一無二のシュールリアリズムを堪能できる。

妄想と幻覚と現実が入り混じった、リンチワールド全開で原点であり、ある意味集大成的な大傑作だと思う。

それにしても、赤ちゃんの正体、牛の胎児とかって噂されてるけど、実際何だったのか、めちゃくちゃ気になる。
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