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2001年宇宙の旅 新世紀特別版のMOCOのレビュー・感想・評価

2.0
「クルーの諸君、これは出発に先立って録画され重要な極秘命令としてHAL9000コンピューターだけに知らされていた。しかし木星圏内に到達し全員が目覚めたので明らかにする。
 18カ月前、地球外にも知的生命が存在する証拠を発見した。ティコに近い月面下12メートルに埋められていた石碑のようなもので、木星に向けて強力な電波を発していた以外は400万年前の姿をとどめたままだった。その正体と目的は不明だ」

 400万年前・・・
 群れをなし生活をしている猿達はグループ毎に別れ、食料や領地の奪い合いをしていました。そんな猿達の目の前の地面から突然石板の様な黒い立方体が出現し、恐怖し叫び狂う猿達の中からその石板に触る勇気のある猿が現れます。石板から何かの伝達を受けたのかその猿は動物の骨を道具として使うことに目覚め人類進歩の大きな一歩を踏み出します・・・。

 現代・・・
 アメリカ合衆国は月の地中に発見した黒色の石板の様な立方体を「モノリス」と名付け、発掘を始めると同時にフロイド博士を月面のクラビウス基地に送り込み極秘調査が始まります。
 フロイド博士は「モノリス」を地中から発掘している現場で「モノリス」が発信している怪電波に襲われます。

 18か月後(2001年)・・・
 木星探査の航海途中の宇宙船ディスカバリー号の船内で船長のデヴィッド・ボーマン指揮官は同乗する人工知能HAL9000型コンピュータから「この探査計画に疑問を抱いている」と打ち明けられます。
 ボーマンの反応が同調的でないと知ったHALは唐突に船のアンテナ部品の故障を告知し話をそらします。
 フランク・プール副官はアンテナ部分のユニットを回収したのですが異常は見つからず、HALの思考に疑問を持ったボーマンはHALには知られないようにプールと話し合い、史上最高の人工知能と言われているHALの思考部を停止させることを決めるのですが船内のカメラを駆使して二人の会話の内容を読唇で知ったHALは自己防衛のために乗組員の殺害を決行します。
 HALはアンテナのユニットを戻す船外作業中のプールを事故に見せかけて殺害すると、救出に向かったボーマンを閉め出し人工冬眠中の3人の生命維持装置を停止します。
 ボーマンは決死の思いで船内に戻ると、助命を嘆願するHALの機能を停止します。
 ほぼ同時刻、フロイド博士のメッセージ動画がモニターに再生されます。そこにはこの探査の真の目的が18カ月前に発見された「モノリス」に関連した地球外の知的生物のと接触にあり、HALだけにはその目的が最初から知らされていたというものだったのです。
 HALの抱いた疑問は間違ったものではなく、暴走と思われた行為は本来の目的を果たすためには必然だったのです・・・。

 400万年前に人間の祖先に知恵を授けた「モノリス」を与えた知的生命体はその後の人間がどうなったのかを観察するためなのか、木星に導かれたボーマンは幻想なのか、知的生命体に頭の中を覗かれたのか、不思議な世界を目の当たりにします。それは人間を飼い慣らすために用意された環境なのか高級なホテルルームの様な空間で、そこで歳とった自分の姿、そして・・・。


 キューブリック監督は配給会社MGMの重役に向けた試写の後「この映画は理性よりも潜在意識や感情に訴える。この映画は聞いていては何も得るものはない。自分の目を信じない者はこの映画を理解できない」と、宇宙人の存在を説明する場面やナレーションを削除しました。映画は
『人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)』
『木星使節(JUPITER MISSION)』
『木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)』の三部構成になっているのですが、そのため三部は難解で理解の範囲を越えています。

 原作者に評価されなかった「シャイニング」も、一般公開前に映画関係者から評価されなかった「2001年宇宙の旅」も映像美を観る映画であって本来評価されなければならないストーリーでグイグイ引き込まれたことは一度もなく。原作者や最初に観た関係者の評価が正しかったのではないのでしょうか?映画の評論は多くの人がメディアに踊らされ、キューブリックの映画は「凄い映像」という評価がいつの間にか「凄い映画」と評価を変えていったとしか思えません。


 宇宙空間を表現する映画のバイブル的映像を提供する映画であることは間違いなく、1969年アポロ11号の2人の乗組員による月面到達以前にこの映像を制作していることは本当に凄いことなのですが、これは共同脚本を行ったSF作家アーサー・C・クラークがNASAと懇意にしていた賜に過ぎなかったのではないでしょうか?

 改めて観直してみると「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」のテレビシリーズを制作したAPフィルムズが1970年に制作した実写版の『謎の円盤UFO』の宇宙感や『スターウォーズ』の宇宙船、2001年ティム・バートンによる『PLANET OF THE APES/猿の惑星』のチンパンジー・ペリクリーズが乗り込む探査ポッド、『インターステラー』のコロニー内の空間感は明らかにこの映画を参考にしていると感じます。


 私は二部の話は面白いと思うのですが「自分の目は信じているのですが、この映画を理解できない」一人です。
「シャイニング」「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」昔からキューブリックの映画は私にとっては挫折の連続、睡魔との戦いです。微量の魅力を感じてコレクションはしているのですが、キューブリック監督作品は私には合わないのかもしれません。
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