むぅ

八つ墓村のむぅのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.7
中村アンじゃなくて小川眞由美。

妖艶な佇まいの方だな。
登場からそう思っていた小川眞由美、髪の毛をかきあげる仕草はこちらが元祖だなという気持ちになった。
やたらとかきあげるので、飲食業的には気になる。ドラマを観ていても、あの坪数と客単価でそんな売上が立つわけないだの厨房に手洗いシンクがないだの文句を垂れがちな悪癖が顔を出したので、今それ関係ないからと自分に言い聞かせた。

ずっと気になっていた八つ墓村に入村。

自分の出生をよく知らぬままだった主人公。ある日、新聞の尋ね人欄に自分の名を見つけ、そこから故郷を知ることになる。
かつて八つ墓村と呼ばれていたその村で、帰郷と呼応するように次々と人が亡くなっていく。
これは殺人事件なのか、それとも祟りなのか。


「あ、やっぱ大丈夫です!」
私なら回れ右して即逃げ出したい。
日本で生まれ育っているので、正直ゾンビにはピンとこないものがあるのだが、祟りには不思議な親近感があるから面白い。
「祟りじゃー!」
桜吹雪の中、こちらに突進してくる映像が観たかっただけだったのだが、自身の価値観の不思議を見つめ直す事になった。
排他的だなと感じる価値観が、それはもうクリスマスのおもちゃ箱のようにごっちゃに詰められている。しんど!と思いつつも、主人公の父とされる人物は、28年前に村人32人を日本刀と猟銃で虐殺し失踪しているのに、その家は村の中でも未だ名家とされていている様子だし、その家の実質権力者として描かれる双子の老婆が村人たちや親族を見下す発言に、つ、面の皮の厚さたるや!と思ってしまった。私なら絶対に引っ越す。
村八分にされてないだけ凄いのに、と。
いやもう、自分のその村八分という発想が怖い。村、家、ましてや血筋などというものに縛られることはないと思うし、縛るなんてと思っていたが、自身の根っこの方にそれを理解出来てしまう感覚があるのだと思うと怖い。
その人がやった事と、家族は関係ないと思うのに。
気をつけようと思っていたところで、小川眞由美がまた髪をかきあげたので意識は八つ墓村に戻った。
そして豪快に飛ぶ生首や、見事な血しぶきよりも、大量に飛ぶコウモリの方が集合体恐怖症的には恐怖だった。ブツブツ・ボツボツ・ウジャウジャが登場しない限り、スプラッターも余裕らしい。

それにしても山崎努の体幹が凄い。桜吹雪の中、祟りだと突進してくるのは彼なのだが、上半身が全くブレない。思わず[山崎努 体幹][山崎努 運動神経]で検索してしまった。
頭に懐中電灯を巻きつけ、猟銃と日本刀を身につけながら全くブレない。何なら下半身だけが動いているように見えるので感動してしまった。
えっ、もうちょっと観てたいんだけどと思ったが、あれ以上観たら夢に出てきそうな気もする。


小川眞由美の妖艶さ、山崎努の体幹、落武者なのに何だか可愛い田中邦衛、変わらないなぁと懐かしさを感じる大滝秀治、白塗りすぎて顔では分からなかったが声でわかった市原悦子、それよりもエンドロールの吉岡秀隆の文字に驚く。
調べたら主人公の子役だった。

人に歴史ありだな、と思うなど。
それにしても年末と古い邦画の相性の良さは何なのだろう。
むぅ

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