backpacker

ゴジラ対ヘドラのbackpackerのレビュー・感想・評価

ゴジラ対ヘドラ(1971年製作の映画)
4.0
ゴジラシリーズ第11作

【作品情報】
公開日  :1971年7月24日
作品時間 :85分
撮影   :シネマスコープ
監督   :坂野義光
制作   :田中友幸
脚本   :馬渕薫、坂野義光
音楽   :眞鍋理一郎
特技監修 :中野昭慶
出演   :山内明、川瀬裕之、木村俊恵、麻里圭子、柴本俊夫、吉田義夫、ほか

【製作舞台裏等概要】
ゴジラシリーズでも有数の強敵"ヘドラ"は、1960年代後半から日本社会における大問題の〈公害〉をテーマとした作品である。

公害モチーフの怪獣のため、非常に生々しく汚らしい、海上のゴミやヘドロの描写が目につくが、それらを際立たせるのはアバンギャルドな演出効果がゆえである。
サイケデリックな色調、スプリットスクリーンによる群集表現、ヘドロに沈み泣く赤ん坊。
幼少期に見ればトラウマになること間違いないような、過激な描写が連続する、非常に前衛的作りである。

監督の坂野義光は、本作が長編監督デビュー作であり、単独監督作品は本作のみである。
「ゴジラが放射熱線で空を飛ぶ」という、多作にない唯一のアイデアを映像化したところ、田中友幸プロデューサーの怒りを買い、特撮監督業を出禁とされた。
このため板野監督は、以降作品が作られていないのだが、「ヘドラ第二作企画」含め、新たな自身のゴジラ作品製作を検討しており、東宝に対し「ゴジラを3D化する権利」を取得していた。
これが後に、2014年ハリウッド版『GODZILLA』にてエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされる原因となるのである。


【作品感想】
前半のサイケ&ロックンロールな映像世界は必見。
「水銀コバルトカドミウム〜♪」のテーマソングも、耳に残って離れない中毒ソングも必聴。

ヘドロに浮かぶマネキン、徹マン中のサラリーマンがヘドロに沈んで死ぬ姿、ヘドラが空を飛んで行った後に残される白骨死体(ヘドラは体内から硫酸ミストを放出するため、金属は錆び、人は肉を溶かされます)等、超過激で攻めまくりの展開が心に刺さります。

残念ながら、予算が無くなってしまった都合上、後半は完全に失速し、イマイチな映像となってしまいますが、ゴジラとヘドラのバトルシーンの凄惨さは凄まじいインパクトがあります。
右手が溶かされて骨が覗いたり、顔が爛れたりといった、ゴジラが満身創痍になって戦うなんて、実に強烈です。
それでいて、ゴジラが人類に対して見せる諦念を感じさせる姿や、文字通り"背中で語る"様子からは、「人間って救い難くて愚かな生き物だわ……」と、内心自己嫌悪で落ち込むほどです。

陰惨で不気味で重苦しい怪作、是非ご覧いただきたい名作です。
backpacker

backpacker