タケオ

ビルとテッドの地獄旅行のタケオのレビュー・感想・評価

ビルとテッドの地獄旅行(1991年製作の映画)
4.2
 「Be Excellent to Each Other , And Party On Dudes‼︎」前作『ビルとテッドの大冒険』(89年)に出演したことで、主演の2人は一躍人気スターに。本作『ビルとテッドの地獄旅行』(91年)が公開されるまでの2年の間で、ビル役のアレックス•ウィンターは映画の脚本や制作を中心に活躍するようになり、テッド役のキアヌ•リーブスは『殺したいほどアイ•ラブ•ユー』(90年)や『ハートブルー』(91年)といった人気作に出演するような売れっ子俳優へと成長した。しかし、そんなキャリアなどお構いなしにアレックス•ウィンターとキアヌ•リーブスは本作でもビルとテッドを前作と同様に•••というか、前作以上にバカバカしく熱演してみせた。能天気に荒唐無稽な大冒険を繰り広げる2人の姿を見ていると、何故だか鑑賞しているこちらまで元気が貰えるのだから不思議である。
 電話ボックス型のタイムマシンを使い、前作のラストで無事に歴史研究発表会を乗り切ることができたビル(アレックス•ウィンター)とテッド(キアヌ•リーブス)は、高校卒業後もろくに定職にもつかず自分たちのロックに打ち込む日々を送っていた。そんなある日、未来から送られてきた自分たちとソックリのロボットによってビルとテッドはいきなり殺害されてしまう。その黒幕は、ビルとテッドが築き上げることとなる「誰もが平等で平和な未来」を快く思わない悪党デ•ノモロス(ジョス•アクランド)。2人にソックリなロボットを利用してビルとテッドのロックを台無しにすることで、「自分が支配者としてあらゆる権力を握ることができる未来」に歴史を書き変えてしまおうと目論んだのだ。地獄に落とされてしまったビルとテッドは、蘇るためにゲーム好きの死神(ウィリアム•サドラー)との戦いに挑むことになるが•••と、自分で書いていても何がなんだか分からなくなるほど無茶苦茶なあらすじだが、本作はどこまでも荒唐無稽でバカバカしい作品なので仕方がないし、そんな「バカバカしさ」こそが本シリーズ最大の魅力だ。どこまでも「アホ」で「バカバカしい」からこそ本作は、今なおカルト的な人気を誇っているといっても過言ではないだろう。
 アレックス•ウィンターは英国放送局の「BBCラジオ5」で、幼少期に性的虐待を受けていたことを告白した。ウィンターはそこで、「童心に帰って無邪気に参加できた本作の撮影作業こそが、傷ついた心を癒してくれた」と語っている。「笑いは最良の薬」というが、本当にその通りだ。「弱者断絶」や「自己責任論」が平気で罷り通る腐った現代だからこそ、本シリーズを鑑賞することには大きな意義がある。ビルとテッドは誰よりもアホで間抜けだが、だからこそ彼らは相手を蔑んだり差別したりするようなことはしない。誰よりもアホで間抜けだからこそ、「誰もが平等で平和な未来」を築き上げることができる。誰よりもアホで間抜けだからこそ、私のようなボンクラ野朗を心の底から笑顔にしてくれる。楽観主義の先にある豊かな可能性をバカバカしくもハッキリと提示してくれる、本当に最高なコメディ作品だ。混迷する社会に苦しむ今だからこそ、さぁ、皆んなで叫ぼう‼︎ 「Be Excellent to Each Other , And Party On Dudes‼︎」
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