このレビューはネタバレを含みます
【昔々のお話。冷たく暗い夜のこと。
天の支配者によって人間は寂しい2本足の生き物になった。】
完全に想定外。
こんなにもメッセージ性の強い哲学的な作品だとは思ってもみなかった。
それでいて外すところは抜群に突き抜けてて、でも根底にあるメッセージはとんでもなくエモい。
私はどこか流されて生きている人物にとても魅力を感じる傾向にあるようです。
主人公のヘドウィグは強烈なルックスとは裏腹に実は環境に流されるまま生きています。
性転換手術を受けたのも、男と結婚し渡米するためには女性になる必要があったため、ダンナと母親に言われるがまま手術を受けます。ヘドウィグはダンナを愛してはいたと思いますが、それは「女になりたい」と必ずしも同義ではないのです。
同じようにダンナも「女と結婚したい」わけではなかったのでしょう。渡米後、すぐに新しいパートナーを作りヘドウィグは捨てられます。
そして残ってしまった「angry inch」のしこり。
自分は男なのか?
それとも女なのか?
自分の定まらないアイデンティティを知るためのある意味ロードムービーなんでしょうかね。
ヘドウィグは「ONE PIECE」のチョッパーみたいな人でした。
うん。
私はヘドウィグみたいな人は好きでしたね。
自分自身に迷って、人に愛されたいのか、認められたいのか、理解されたいのか、それすらも分からずもがいて。
結局他人なんて関係ないんですよ。
大事なのは自分が自分を認めてあげること。
それができた時、本当の自分が見えてくるんですね。
ということで、もっと明るくて何も考えずノリで観れるような映画だと思っていましたがえらく的外れでした。
これを1990年代前半に創作したわけですから、やっぱり日本てのは行動が遅いですよね。こういう問題って日本ではようやく取り上げられるようになったって感じですもんね。
まぁ、人それぞれ考えがあるだろうし、個人的には私の生活と交わることなど永遠になさそうな世界の話ですけど。
人それぞれなんだから、自分が自分を認めてあげれば、他人から認められなくたっていいんじゃないかって私は思う、というお話。
認めてくれる人が目の前に現れたらそれは素晴らしい奇跡なんじゃないですかね。