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陸軍中野学校のRのレビュー・感想・評価

陸軍中野学校(1966年製作の映画)
4.7
増村保造作品鑑賞第4作目! おおおオモシロイ! 好みでいうとダントツ卍やけど、面白さは今んとこコレが一番かも! 他の作品見たい欲が高まるー! お話の舞台となるのが昭和13年、国家総動員法の年。第二次世界大戦の直前。日本陸軍にひっそりと中野学校というスパイ育成学校が設けられ、18人の優秀な新米少尉が極秘で召集される。その中のひとりが主人公、市川雷蔵演じる三好次郎。彼らが集められた目的は、自分の本当のアイデンティティは完全に棄てて、スパイとなって活動するための訓練を受けることである、と説明を受ける。今後家族にも恋人にも一切会えなくなってしまうということで、大いに同様、躊躇するが、草薙中佐の熱意におされ、日本国のために、皆が賛同する。そして前半は彼らのスパイ養成プロセスが描かれていく。最初からいろんな点で面白く、まず日本人スパイって発想自体が意外やし、軍服でなくスーツに身を包み、鍵や金庫の破り方から、偽アイデンティティのための職業訓練、女を誘惑するためのダンスレッスン、性感帯の伝授など、多岐にわたるトレーニング内容がワクワク面白い。一方、草薙中佐は、軍の中枢がみんな権力を求めて躍起になってるだけなのを遺憾に思い、日本人としての誇りと救世心を胸に、悪しき政府の支配から他国の国民を救ってやるのだ、と正義の理想に燃えている。うーん、何とも言えないキャラクター……彼のパッションが皆に伝播して、みんなでその正義とやらのために頑張るんやけど、女が理由で脱落する者が出てきたとき、全員で彼を純日本風にとんでもないとこまで追い詰める。異常なほどの二面性を盲目的に矛盾なく備えている不気味さ。怖い。後半はいよいよ英国領事から暗号の解読方法を盗み出そうとするリアルなスパイ作戦が展開。これがまためちゃめちゃ面白くて、娯楽サスペンスとして普通に楽しめ、テンポよく淡々と最後の衝撃へと話を繋いでいくプロセスには不思議な気持ち良さがある。前半は市川雷蔵が主役の割に存在感うすいなーと思ったけど、後半は気味が悪いほどミッションに傾倒する人非人、まるでマシーンのような冷徹さを漂わせ、うわぁ、ひでぇ、うわぁ、ってなります。演技でいうと草薙を演じる加東大介の存在感が素晴らしい反面、学校の他のメンバーはみんなえらいビミョーな演技するやん、て思った。わざとなのか⁈ 印象的なセリフもいくつかあり、特に、次郎の婚約者が、女ですもの、戦争なんか大嫌い!ってのは良かった。やっぱ本能的に嫌なんだよね、女の人は、みんな、戦争。そういう感覚はホント信頼できるよな、と思う。いろーんな点でとっても面白く、高度にエンターテイニングな映画だった。是非ともまた見たい。
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