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クリスティーンのRのレビュー・感想・評価

クリスティーン(1983年製作の映画)
4.0
ひさびさにカーペンター映画を。これはお初です。こんなケッタイな話をこんな面白い映画にできるのはカーペンター監督ぐらいしかおりますまい。愛車という精神が人間にはあるようだが、本作では、車が人を愛し返すのであります。つまり、車と人の恋愛。主人公は高校でフットボール部に所属するまぁまぁイケてるデニス。彼の友だちのアーニーは、ナヨナヨしたメガネのイケてない童貞くん、時折性格の悪いオヤジくさい同級生たちにいじめられてる。そんな彼が、ある日とつぜん、サビサビでオンボロの古くさい赤い車を小汚いおっさんから買い取り、それをピカピカに手直しする。その過程で、従順だったアーニーは親に反抗し始め、徐々にそれまでと全くの別人に変貌していく。このメタモルフォーゼがとても興味深いし演技も面白い。それはバージンのビフォアアフターに起こる男性の変化とはぜんぜん異質なものだ。まるで霊に取り憑かれでもしたかのよう。それほど彼にとってその車には魅力があるのだ。その車の名がクリスティーン。アーニーはクリスティーンに異常な愛情を注いでいたが、ある日、いじめっ子たちがガレージのクリスティーンをボッコボコに痛めつける。その後、彼らの身に恐ろしいことが…! という流れ。序盤はカーペンターらしいのんびり牧歌的とも言えるペースなのでいきなりスリルを求めると退屈だろう。リラックスしてくだらぬコメディでも見る感じで臨むとちょうど良い。すると、じわりじわり引き締まっていくテンションにじわりじわりのめりこんでいく。同監督のキャリーみたいにドカーン!と行くシーンはないけど、最後まで奇妙な吸引力が効いている。ほんま独特やわーカーペンター! 特にガスステーションのシーンの静かなるドッカーンとそのあとのサラッとしたアウトレイジには心からうっとり。本作最大の見どころはやはり、無機質ななかにメンヘラな恋愛感情と冷たい復讐心をたぎらせるクリスティーンでしょう。絶対に心も話も通じなさそうなキラーマシン感にゾクゾク。あと、メリメリゴリゴリ破壊と復活を繰り返す様もすごい! 復活シーンステキやから何度も早戻しして見てしまうわー! そして、ラストショットのくるぞ!くるぞ!って緊張感サイコー! あとは、やっぱカーペンターのトレードマークは音楽ですね。シンセサイザーの調べがこの作品でも素晴らしい。ここ最近見た中ではピカイチの変な映画でした。是非一度。
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