むぅ

メリー・ポピンズのむぅのレビュー・感想・評価

メリー・ポピンズ(1964年製作の映画)
3.9
「iPhone13、メリーポピンズ」

友人から意味不明なLINEが送られてきた。私が映画好きだと知ってこそのLINEだったのだが、申し訳ない。観たことがなかった。

「iPhone13の画面の説明、絶対聞いたことあるはずの長い呪文の歌のパロディーになってる」
「あ、カリフラワー的なやつ?」
「それ」

名作は凄い。
観たことがなくても、音楽は知っているという事は多い。

Supercolorpixelistic
XDRidocious

スーパーキラキラカラフルクッキリディスプレイと訳されていた。
いや、まぁ、そうよね。これ訳せって言われたら悩むよな、と思いながら時々出会ってしまう「邦題考えた人、小一時間ほど問い詰めたい問題」に思いを馳せてしまった。

人生って風が吹いている。
とにかく風を感じる物語だった。

メリーポピンズの傘のシーンはもちろん、子供たちと絵の中に入り込むシーンで感じる風の心地良さ。草木の香りまで感じられるかのようだった。
でも実は一番印象に残った"風"のシーンは、一家が乳母を募集した際に面接に訪れた女性たちが暴風に吹き飛ばされていくシーンだった。
舞台は1910年のロンドン。
子供たちの母が熱心に女性参政権運動に参加している。
『未来を花束にして』と同年代の作品なのか。
暴風が当時の女性たちの境遇を示唆しているように感じてしまった。

その"風"に立ち向かってくれた人たちがいたからこそ、今がある。
暴風から向かい風、そよ風になっていくように。この時代を私もしっかり自分の足で立ち、前に歩いていかなければと思った。

「ここにいるのは風が変わるまで」
子供たちに伝えるメリーポピンズ。一家の風向きが変わっていくのが嬉しくもあり、そうなるとメリーポピンズとの別れが近づくので寂しくもあった。

風は追い風、どこまでだって飛べる気がする。
大好きな漫画で出会った言葉。
人生の中で、そんな風に吹かれることはそう多くないと思っていたが、自分で起こせる風もあるのだとメリーポピンズに教えられた気がした。

向かい風に煽られた時、口にするだけで笑顔になる魔法の呪文を覚えておこうか。
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス。
思い出している間に風が止みそうなので、私には無理そうだ。

「『メリーポピンズ』観たよ」
「どうだった?」
「機種変したくなった」
「そこ?」
年内には一緒に飲みながら感想を話せる日が来るといいな。
むぅ

むぅ