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ある子供のbackpackerのレビュー・感想・評価

ある子供(2005年製作の映画)
4.5
精神的に子供のままに、大きくなってしまった青年ブリュノ。
その青年と相互に依存して生きる少女ソニア。
そんな大人になりきれない二人が親となり、その日暮らしの生活は綻びを見せていくことに。

二人の稚拙な戯れが、まさに幼い子供のようで。
金欲しさに、浅はかで思慮深さのない行動をするブリュノ。
生まれたばかりの赤ん坊ジミーを売り払い、親の自覚は皆無の有り様。思考回路は子供でストップしています。

それでも、ブリュノがどこか憎めない。
彼は決して怒らない。多少声を荒らげることもあったが、怒鳴り散らすことはしない。
恋人ソニアに対して、真摯に対応しているように見える。ただし、赤ん坊を売ることがどれだけ相手を傷つけるかや、自分のとっている行動が悪いことであるかを、しっかりと認識していないだけで。

挙げ句の果てには、子分の悪ガキ・スティーブとひったくりをし、スティーブだけが警察へしょっぴかれることに。
けれど、彼を見捨てて逃げたりしない。自ら警察署に行き、自分がやったと刑事に告げる。スティーブの兄貴から借りていたスクーターも、ちゃんと返す。
浅薄で、子供のままに生きているけど、心には優しさを持っているように思えます。

ラストシーン、ソニアが面会にやってくると、ジミーのことを尋ねた後に、堰が決壊したように泣きじゃくる。
怒りに震えていたソニアも、結局は面会に来るのだから、やはりこの二人は、幼いながらに互いを愛し合っているのかなぁ……なんて思いました。

全体通して暗く、重い、シリアスな展開の映画ですが、それはエンドロールからも感じられます。
このエンドロール、音楽も声も、何もないのです。実に無機質な感じ。暗くて救いのないこの映画の、とどめの一撃ですね。

長回しの多い映画で、重苦しい雰囲気が印象深い映画でした。
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