野球選手のファンが鬱屈した日々を発散するためファン活動にのめりこみ、大事件を引き起こすスリラー映画。
なかなか興味深い内容で、吹き替え版ではありながら名優たちの演技もあって一気に観れてしまった。
しかし公開時はさほど評価もされていなかったとのこと。考えてみればそれも仕方ない内容かもしれない。
スリラーとしては、ストーカー側のロバート・デ・ニーロに肩入れしているような場面があったことが弱点か。
近い内容の『タクシードライバー』や『キングオブコメディ』よりは少なからずデ・ニーロ寄りのように感じる。
これらの作品のデ・ニーロは明らかに「ヤバい奴」みたいな雰囲気だが、本作はそれが徹底してない。この男の純粋な野球への愛が感じられてしまうのだ。
作り手がデ・ニーロに共感してほしいのかそうでないのかわからず、
最後は誘拐事件のサスペンスに持っていくような筋書きなのに、その前に犯人の裏事情もガッツリ描いているため、
「執着ゆえに事件を起こした男の悲劇」と
「ストーカーのターゲットになった野球選手の見に降りかかる恐怖」
の2つの軸で行ったり来たりしているように見える。
そのいろいろとブレた感じが観ていてモヤモヤするというのはわかる。
ただデ・ニーロの迫真の演技はスコセッシ作品を思わせるものがあるし、
一概に捨てきれない作品でもないのは確かかも。