シリーズ第一作。
主演の市川雷蔵をはじめ、脇も中村玉緒に若山富三郎となかなかの布陣。
とはいえ観た時の印象はかなり平凡。
実際シリーズ初見時に最初に本作を見た時、なんか微妙だと感じて2作目以降の鑑賞を保留していた。(その後2作目から鑑賞し始めて本シリーズにもハマることになる)
主人公の狂四郎は後のシリーズと違って明るい印象のキャラクターで、彼を取り巻く仲間もたくさんいて心を通わせるヒロインもいる。
つまり、パッと見だとよくある時代劇ストーリーと雰囲気がほとんど変わらないんだよね。
狂四郎のアイデンティティとも言える出生の秘密などのダークな一面は一応語られるけど、本作ではそれっきりで印象が薄い。
あと作中で狂四郎はよく笑うが、後の作品のような不敵な笑いというよりは普通にニヤついてる感じがあってなんだか違和感。
むしろ若山富三郎の少林寺拳法の使い手のほうがキャラが立ってるような気がする。
その一方で作品後半では後のシリーズらしい狂四郎の演技がところどころで見えるので、おそらく雷蔵氏やスタッフも手探りで作っていた感じは伝わってくる。
ただ普通の映画としても、そこまで物語に起伏がないのは痛い。最後の黒幕を倒す場面は地味だし、若山富三郎とも決着はつかない。
見終わった後に、どことなく消化不良な感じもある。
これ一本だけ見ると『座頭市』と違ってシリーズ化しそうな作品にはお世辞にも思えないが、これ一作で終わらなかったところを見ると、作り手側にはなんらかの手応えがあったのだろう。
そして後のシリーズ化成功も考えると、本作はまさに宝石の原石そのものだったようにも思われる。