出生の秘密を知る女性に会いに、浜松へと向かう眠狂四郎。
そんな狂四郎の行手に、抜け荷で利益を貪る廻船問屋とコンプレックスから女性を殺める狂気の姫君の魔の手が襲いかかる!
これ一本に眠狂四郎のすべてが凝縮されたシリーズ最高傑作。
本作の見どころは、なんといっても斬新な映像表現だろう。
ヌーヴェルヴァーグから強い影響を受けた池広一夫監督らしく、
特殊効果やカメラアングルなどの演出を駆使した前衛映画のような演出で、妖しく禍々しい本シリーズの世界観を存分に見せてくれる。
特に冒頭のキリシタン神父が誘惑される場面や、ラストの秘密が語られる場面は白層。現代の目で見てもかなりインパクトがある。
ちなみに円月殺法にストロボ演出が入ったのも本作から。おそらく元々は先述の映像表現の一環だったのだろう。
007シリーズでオープニングの一部分にすぎなかったガンバレルがシリーズお約束になったように、ストロボ円月殺法もシリーズのお約束となる。
もちろん時代劇としての見せ場も十分。
次々と襲いくる刺客や罠を撃破していく無敵っぷりは爽快感たっぷり。
若山富三郎の少林拳使いも再登場。雷蔵相手に手加減してる感は強いけど……。
後の作品には大人の事情で再登場しないのが残念。
80分の短い上映時間に濃い内容をギッシリと入れた、作り手のチャレンジ精神を感じる満足度の高い一作。
ここに来てシリーズはひとつの頂点を迎えた感はある。