ゆずた裕里

モリコーネ 映画が恋した音楽家のゆずた裕里のレビュー・感想・評価

5.0
個人的に最も尊敬している作曲家、エンニオ・モリコーネ氏のドキュメンタリー。
以前に2回鑑賞しているが、より音響設備のいい劇場で上映していたので再見。

担当した映画の紹介とともに流される名曲の数々に、何度も魂を揺さぶられる。
さまざまな曲が流れるその時その時で違った感想を思い浮かべたはずなのに、見終わった後に何も覚えておらず、夢や幻だったかのような感覚だけが残っていたのは、それだけ全ての曲に異なる魅力が溢れていた証だろうか。

音楽界のメインストリームを外れ、映画音楽と前衛音楽の世界にいた彼がオスカーを受賞できたのは、もちろん本人の才能もあるけれど、
作曲する時やチェスをする時のように人生を冷静な目で見つめていたのが大きいように感じた。
常に己の感性を信じ、挑戦し続けることができたのかもしれない。

生い立ちや担当した映画の思い出話がメインの内容だけど、中には担当した音楽における工夫、さらには音楽理論など専門的な話も出てくる。
個人で作曲とかしていたら理解できたかもしれない。せっかくの貴重な話なのに残念。

個人的にはモリコーネ氏を初めて映画音楽家として意識して鑑賞した『イングロリアス・バスターズ』で使われてた曲が多く取り上げられていたので、その元ネタが知れたのもあってとても興味深く観れた。

もう彼はこの世にはいないけど、この作品を観たことで少しでも彼の神髄に近づけたような気がした。
ゆずた裕里

ゆずた裕里