見ていて相当しんどかった一作。
冒頭、西田敏行の総理大臣が「この服やめません?」って言ったあたりで、これはコメディなんだと頭を切り替えたけど、それでもしんどかった。
そんな感じで、大怪獣の死骸の処分を国会、防衛軍チーム、政治家たちが右往左往しながらやっていく話なのだが、
作中のそれらの行動や結果が、ほとんど観客のカタルシスに繋がらないのが痛い。
基本的には政治家のグダグダっぷりを下ネタを交えて風刺するのが本作のスタイルなのだが、
内容がずっと同じような感じの一本調子なので、時々笑えるところはあっても次第に飽きてきて、だんだんフラストレーションに変わっていく。
下ネタも程度が低く、かつドギツいものばかり。これが『クレヨンしんちゃん』ならうまくデフォルメしてくれるけど、残念ながらこれは実写映画なので、同じようなネタでも相当エグい印象。
しかも本筋の死骸処理に直接関わらないようなネタに時間をかけるため観ていて途中で集中が切れ、何を見させられているのかわからなくなってくる。
30分枠で何週かに分ける深夜枠のドラマならともかく、2時間の映画でずっとこれはぶっちゃけキツい。
本筋に関わらないといえば恋愛要素。
唐突に太鳳ちゃんと濱田岳の濃厚なキスを見せられる。あれは笑いどころだったのかな。
ただ後のプロデューサーの発言を見る限り本気の場面だったのかもしれない……。
山田涼介と濱田岳の濃厚なキスを出してきたら間違いなく笑ってたのになぁ。見たい人も結構いると思う。多分。
ちなみにこの恋愛要素、ラストまで結構足を引っ張る。
こうして問題は解決することはなく、唐突に無茶苦茶なラストで物語は締められる。
「結局政治家は何も解決しない」風刺としてはまあまあだが、
そこに観客の感じるカタルシスは一切ない。
ただ悪いところがなかったわけでなく、
ギャグがスマートに描かれたところ(「大切なのは対策よりも真っ先に現場に向かったかどうか!」など)は素直に笑えたし、
巨大怪獣希望くんのCGもかなりレベルが高かった。
そして途中のオダギリジョーが絡んだダム爆破作戦の場面だけは、まさに本格派SF映画の趣き。オダギリジョーの役もアルマゲドン的なカッコよさがあって、本作では完全に彼の独り勝ちだった。
そんな感じの本作なのだが、映画も興行である以上、相当カネをかけた映画はたくさんのお客に見に来てもらわなければならない。
しかしこの映画、どんな客層に見に来てもらおうと考えて作られているのかさっぱりわからない。リピートで稼ぐことなんてもってのほか。
特撮ファンは当然そっぽを向くだろうし、一般層に受けるにはネタがドギツすぎるしカタルシスも薄い。子どもが見るような映画でもない。言っては悪いが監督も、名前だけで製作費がペイできるほど客が呼べる人選とは思えない(それができるのは日本だとアニメ畑の人か、山崎貴と三池崇史、あとギリギリ大友啓史と福田雄一あたりか)。
あとは役者のファンくらい……?
天下の東映と松竹が手を組んで、かなりの大金がかけられているなら、ソロバン勘定やマーケティング調査だってしっかりしているはずなのに。
もしかしたら最初から炎上狙いだったか、何か他の目的があったんじゃないか……と邪推してしまうくらいには上層部から制作のゴーサインの出た経緯が謎。
スタンリー・キューブリック監督の政治風刺映画『博士の異常な愛情』では、当初ラストで米ソ両国の首脳がパイ投げをするラストが予定されていた。
しかしキューブリック監督はこのシーンをカットした。
曰く「このラストでは喜劇(コメディ)が茶番(ファース)になってしまう」と。
このエピソードに例えるならまさに本作は、
「2時間ほぼずっと誰にも当たらないパイ投げをしている映画」
であった。