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悪い男のyuienのレビュー・感想・評価

悪い男(2001年製作の映画)
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初めて映画を観て、監督と役者に明確な殺意が湧いたし、今まで観た全てのキム・ギドク監督作に対してすら、180度印象変えた一作。
以前、監督がインタビューで「男なら誰でも一度は好きな女をレイプしたいと思ったことがある」って笑顔で言ってたけど、自分の性癖を一般論化しないでほしいし、なんなら実践してたくせに、よくいけしゃあしゃあと言えたものよね。この発言が当たり前のように公に発表できるのは、結局男性のあらゆる欲望に対して寛大な社会が前提にあるこそだからではないだろうか。
映画に描かれていたものを究極な愛の形だとか言うなら、愛なんてくそくらえ。そして、あいらぶゆーと言いながら相手が嫌がることを無理強いすることも愛だといえるなら、愛なんて一生理解しなくていいです。不器用は言い訳にはなりません。
間接だろうが直接だろうが、どんな理由があろうと、レイプ行為を伴うならそれを何か尊い感情にカテゴライズできないだろう。

相手を力ずくで自分のレベルまで引き摺り下ろして、肉体的にも精神的にもこの上ない苦痛を与え、なおかつ苦しみに歪む愛しき人の顔を暗闇から観察する。なるほど、きっと主人公がヒロインに対して抱いているのは、Radioheadの『Creep』の歌詞みたいな思いだろうけど、やってることは、エゴの押し付け以外の何ものでもないし、究極のマスターベーション。ヒロインのほうもストックホルム症候群としか見えないけど、最後美しく穏やかに締め括ったのは、本当に溜飲が下がらない。これではDVも愛情表現のひとつだと主張するのと何ら変わらないじゃないか。一方的な歪んだ性癖を正当化して美化するな。

『サマリア』といい、『弓』といい、キム・ギドクは女性に性的な幻想を押し付けて実体なんてみてないし、『春夏秋冬そして春』に至っては、女性は煩悩の対象としてのみ登場しており、根底にある蔑視を強く感じる。
総じて、毎回哲学やら宗教やらの要素を絡めていかにも思慮深げに装いながら、公然自慰してるとしか思えない。
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