yuienさんの映画レビュー・感想・評価

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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

一見フェミニズムを語っているが、実体はMale Gazeに満ち溢れていて、女性を精神的に姦淫した映画だった。

そもそもランティモスは好きではなく、この映画もスルーするつもりだったけど、Vasilis
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ママと娼婦(1973年製作の映画)

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確かにカメラワークや画がキマっていて、限定された空間の中でのみ展開されていたにも関わらず、3時間半という時間をそれほど冗長に感じなかったのは監督の力量とセンスによるものだろうが、すごく雑に言ってしまえ>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.4

思った以上にプライベートな映画だった。親との関係に疎外感を抱いたことがある人なら感覚的に理解しやすいのではないんだろうか。裏を返せば、かなり感覚に依拠した作品だから、そこにシンパシーを覚えられるかどう>>続きを読む

レッドタートル ある島の物語(2016年製作の映画)

4.5

初めて観たときは、なぜこの映画にこんなにも心打たれるかよく解らず、ただ感覚的にとても好きだと感じた。今回改めて観て、自分はこの映画の持つ素朴な清潔さと、人生における普遍的なテーマを自然との共存の中で描>>続きを読む

片袖の魚(2021年製作の映画)

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多様性が叫ばれる中、本作で取り扱うトランスジェンダーに限らず、あらゆるマイノリティに対してどういう態度で接することが正解なのか、しかし、最近ますますわからなくなってきた。

そもそも模範回答なんてない
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

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本当は痛みが鈍く疼いているけれど、傷を真っ向から認めたら、その痛みに耐えきれず、自分がバラバラになりかねないから、気づかないふりをする。或いは、大したことではないんだと自分に言い聞かせる。

真剣に向
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

一日のうちに、彼女は自分自身の為に生きる瞬間がどれほどあるんだろう。夫や息子の為に、そつなく家事をこなす、おそらく十年が一日の如く日々同じことの繰り返し。全てがまるで儀式の様で、主体性を排除した、形骸>>続きを読む

悪い男(2001年製作の映画)

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初めて映画を観て、監督と役者に明確な殺意が湧いたし、今まで観た全てのキム・ギドク監督作に対してすら、180度印象変えた一作。
以前、監督がインタビューで「男なら誰でも一度は好きな女をレイプしたいと思っ
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Eggs 選ばれたい私たち(2018年製作の映画)

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女性という自己認識だとか、結婚だとか、子供を産むことだとか。同世代ではないが、彼女たちの悩みは、ちょうど自分が最近考えていたこととシンクロしていて、共感を覚えるところはたくさんあった。しかし、そうした>>続きを読む

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

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思ったほど突き刺さらなかったというか、あくまで麦と絹のストーリーとして眺めていた。
出会いから別れまで、ありふれたひとつの恋愛の物語。しかし感情がある限り、それぞれの物語が構築されるわけで。ここまでア
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三月のライオン デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

4.5

話こそ近親相姦ものだけれど、インモラルな関係性というよりは、人を好きになるどうしようもなさという、もっと普遍的なものを描いている。
わたしも、好きという気持ちが募るほどに、途方に暮れてしまう。だから、
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彼とわたしの漂流日記(2009年製作の映画)

5.0

さまざまなソーシャルメディアが氾濫して、その気になれば、端末ひとつで、いつだってどこでだって誰かと即座に繋がってしまえる。

画面越しなら、嫌いな自分を都合よく誤魔化せるし、コピーアンドペーストで瞬時
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燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)

4.4

静かな湖面の下で鮮やかな焚き火が燃えているようだった。降り積もる目線、一つ一つの仕草、顔のない肖像画の心臓部にともされた火。

マリアンヌは憤怒しかなかったエロイーズの心に火をともし、自由と、そしてそ
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82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

程度の差こそあれ、多くの女性は生きていく上で、何かしらの違和感を経験しているのではないだろうか。

これは私の大学の教授の話。彼女が大学生の頃、後輩の男の子にストーカーされて、その後輩の所属するゼミの
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歩いても 歩いても(2007年製作の映画)

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家族って、難しい。
溝が深ければ深いほど、平然と愛想笑いの一つくらいできてしまうもの。
ぎこちなくなってしまうのはやはり気にしてしまうから。

「だって親父はまだおれがプロ野球のファンだと思ってるんだ
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海街diary(2015年製作の映画)

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元日。いつの間にか年が明けてしまっていた夜勤帰りの家路で、ふと今年の初詣は鎌倉にしようと思い立つ。仮眠もそこそこに、着の身着のまま、妹と一時間ほど電車に揺られながら鎌倉に向かった。

私は鎌倉がとても
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イントゥ・ザ・ワイルド(2007年製作の映画)

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最近映画を観たくないと思ってしまう。本も読みたくないと。没頭したらあっという間に時間が経ってしまい、そうしたらお休みがなくなり、また仕事に行く時間になるから。予定のない日はただただぼんやりしていること>>続きを読む

永遠と一日(1998年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

冷たい霧が立ち罩め、窓を開け放した寝室をじっとりと濡らす。波の音は揺り籠をそっと揺らす子守唄のように柔らかく、穏やかに囁いている。
窓外から、しとしと、という音が微かに聴こえてくる。曙の空はどうやら、
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母という名の女(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

子供の頃、母は世界で最も綺麗な人だと本気で思っていた。滅多に会うことができなかったから、強い幻想と憧れを抱いていた。いつも遠い場所のいい香りを纏っていた彼女は、私の所属する世界と違う世界で軽やかに生き>>続きを読む

アスファルト(2015年製作の映画)

4.0

毎日私たちは多くの見知らぬ人々と肩をすれ違う。時々その中の幾人かと小さな火花をすり起こすことはあるかも知れない。けれど、この滔々と流れる人の海原の中で、共に家路に着くひとは、一生で一体何人なんだろうか>>続きを読む

ひなぎく(1966年製作の映画)

5.0

「女の子映画の決定版♡」なんて、短絡的なキャッチコピーで刻印しないでほしい。そもそもこれは「女の子」専属の映画ではないし、可愛さは一つの手段であってそれ自体が目的ではないから。いわばチャーミングに着飾>>続きを読む

Al primo soffio di vento(原題)(2002年製作の映画)

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Al primo soffio di vento
風の一番目の呼吸で

タイトルからしてもう愛さずにはいられない。風の息吹が本当に聴こえてきそうなくらいに、夏日が瑞々しく澄み渡っていた。
雨のように
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汚れた血(1986年製作の映画)

5.0

愛を語る君はあまりにもいたいけで美しく、まるで暗闇でぼうと光るまぼろしのようだったから、僕はただただ息を潜めて見つめていた。

赤は静かに燃え上がる愛の色。青は孤独の夜の色。幼いゆえの疼き、駆け出さず
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青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)

5.0

ウェールズ語で「hiraeth」ということばがある。二度と帰れない、或いはもう既に存在しない故郷への郷愁という語意があるらしい。『翻訳できない世界のことば』という絵本のそのページを読んだとき、真っ直ぐ>>続きを読む

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)

4.0

頑なに閉ざされた唇の代わりに、器用な指先は滔々と、きめ細やかな感情を鍵盤の上に連ねる。豊かな音は、情熱、躊躇い、思い煩い、そして愛の気配となって空気の中で膨らみ、迸り、溶けていく。

ピアノが奏でる音
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めぐりあう時間たち(2002年製作の映画)

4.3

ときどき、生活という名の牢獄に収容された囚人だという感覚に襲われる。義務やら一般論やら概念でしか存在しない透明な拘束衣に、きつく雁字搦めに縛り付けられ、脱獄のすべも知らない。
自己を生きるって、痛みを
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かぐや姫の物語(2013年製作の映画)

5.0

いのちはまるで大きな糸車のように、果てしなく回っては、複雑で、さまざまな色合いの糸を紡いでいく。一つの生はたくさんの生と交差していきながら営まれてゆく。

たとえば、わたしの血の中にはきっと、父や母、
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パターソン(2016年製作の映画)

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輝きは何の変哲もない日常生活の中に宿る。奇跡はいつだって肩と触れ合う0.1mm先にある。

生きることは時には悲しみと絶望に満ちているけれど、よく目を凝らせば、美しい瞬間はそこらじゅうに散りばめられて
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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

4.5

角砂糖がぬるい紅茶のなかでゆるやかにとけていくように、淋しさがじんわりと体のなかで染みわたっていく。死という名のヴェールで柔らかく、曖昧にくるまれているような。そんなおだやかさがあった。

しんしんと
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愛がなんだ(2018年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

まずわたし自身の告白をします。あなたがきっと知らないであろういくつかのこと。
道行くあらゆる人からあなたの面影を見出して、時にはひとりで心が小躍りしたり、時には酷似した後ろ姿に、意味もわからずに涙が込
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荒野にて(2017年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

控えめな表面の内側に、確かな熱を孕んでいる。濃密な寂寥感が横溢しながらも、どこか清涼感があり、澄徹としていた。
淡々としたセンチメントが、殺風景な荒野とミルフィーユな空が織りなす壮観に融けこむ。繊細な
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悲しみに、こんにちは(2017年製作の映画)

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優しい色の夏、ほろ苦い味の悲しみ
飾らない素朴な日常の中で展開される、ありのままの喜怒哀楽

光が柔らかく、透き通っていて、あらゆる感情をそっと包み込む。すべてがナチュラルでびっくりするほど生き生きし
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夜の浜辺でひとり(2016年製作の映画)

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まるで気にかけていないと装いながらも、心の奥底ではきっと来てくれると、うすい可能性に期待して… ぼんやりと、浜辺の砂上で まぶたの裏に浮かぶ顔をなぞる。

彼女が恋人を想い、海辺に佇むときの後ろ姿から
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アントニアの食卓/アントニア(1995年製作の映画)

4.2

「種をまく 食卓を囲む 愛し合う
いのちは踊り 季節はめぐる」

なんて的確で素晴らしいキャッチフレーズなんだろう…

これは、ひとりの女性・アントニアを軸にすえた“ファミリー”・サーガであり、
その
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大人のためのグリム童話 手をなくした少女(2016年製作の映画)

5.0

素朴で味わい深い 水墨画タッチの線がまるで呼吸しているみたいで、曖昧な輪郭を縁取る。非常にミニマムな作画でありながら、豊かな躍動感やエモーションを巧みに表現していた。

小さい頃に読んだグリム童話の『
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心と体と(2017年製作の映画)

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現実の世界で巡り会うよりも前に 内在的の世界で既に惹かれ合っていた、というコンセプト…なんて素敵なの…。幻想的なロマンチシズムやドリーミィな物語を、対照的である、神経質且つ禁欲的に整えられた空間の中で>>続きを読む

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