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突然炎のごとくの小のレビュー・感想・評価

突然炎のごとく(1961年製作の映画)
4.3
「午前十時の映画祭8」の立川シネマシティ特別企画「町山智浩氏が語る20世紀名作映画講座」で鑑賞。上映前に15分程度、上映後に40分程度、町山さんの解説付き。やっぱり凄いね、背景からトリビア的なことまでいろいろ良く知っているし、話も面白い。こういう話を聞くと映画がより一層好きになっちゃう。

第一次世界大戦前後の1910年代、オーストリアの青年ジュールとフランス青年のジムが知り合い、友達になる。ジムはイケてるけれど、ジュールはイケてなくて、ジムがジュールに女性を紹介しようとするような関係。

2人はある時、幻燈会に行き、アドリア海の島の写真に映った女の顔の彫像に魅了される。それからのち、2人は島の彫像の女と瓜ふたつのカトリーヌという女性と知り合い、同時に恋に落ちてしまう。

1人の女に2人の男の三角関係の話だけれどこの女が凄い。女の地位が低い時代にあって、男勝りで、髭を付けて町を歩いたり、気にくわないとドボンとか…。そして、男に対してとにかくめちゃくちゃで、何しちゃってんの? って感じ。

その自由奔放で開放的な女性像に、公開された1962年代当時、女性解放運動が活発化しつつあったアメリカとイギリスで、フランス映画として異例のヒットを記録した。

女性解放運動のシンボルの映画ように言われることもあるみたいだけれど、フランソワ・トリュフォー監督が語るところによると「アンリ=ピエール・ロシェの小説を何故映画にしたいと思ったのか、当初は良くわからなかったけれど、ある時わかった。カトリーヌを自分の母親だと思ったからだ」という(町山解説より)。

複数の男性と関係を持ち、子育てもろくにしないトリュフォー監督の母親は確かに変だけれど、女性を蔑ろにする社会だから、そういう女性もいたのだろうと、肯定したかったらしい。

原作はほぼ実話で、イケてるフランス青年ジムのモデルは作者のロシェ。イケてないトリュフォー監督は、モデルではないけれど、ジュールに感情移入していたとか。だから、映画はジュールの目線で描かれる。

トリュフォー監督はイケてないが故に、イケてる男と美女がイチャつくラブシーンが嫌いで、ラブシーンを美しく描かない。この映画でも、偶然に撮れたナニコレ的な映像を敢えて使っているとのこと。

「午前十時の映画祭8」での上映は6月10日からなので、ご覧になる方はどのシーンか探しながら鑑賞するのも一興かと。この企画では上映前に「どこか探してみて」と言われ、ほとんどの人がわかっていました。

●物語:2.00(4.0×50%)
・面白い。トリュフォー監督は自身の葛藤を表現したい人だったみたいだけれど、そういう映画って惹かれる。

●演技、演出:1.35(4.5×30%)
・ジャンヌ・モロー演じるカトリーヌ、凄いです。ジュールのヘタレぶりにも、そんなのアリなの?って感じ。イケてないトリュフォー監督の演出に激しく共感(笑)

●映像、音、音楽:0.70(3.5×20%)
・美しくないラブシーンに注目ですね。

●お好み加点:+0.2
・やっぱり解説があると楽しいし面白さが増す。この映画に影響を受けた作品も観たくなった。
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