茜

地獄の警備員の茜のレビュー・感想・評価

地獄の警備員(1992年製作の映画)
3.3
暗くじっとりした和製スラッシャーとしては面白いんですけど、観れば観るほど「なぜ相撲取りなのか」という疑問ばかりが浮かんでしまう。
日本人に馴染み深いスポーツだからなのか、力持ちだからなのか…それなら柔道とかプロレスラーでも良い気がするし…。

本来であれば安全を守ってくれる立場の「警備員」が殺人犯っていうアイデアは面白いです。
警備員ならば施設内を知り尽くしているし、鍵だってあるし、カメラで監視だって出来る。
この警備員を演じる松重豊の、何を考えているのか全く読み取れない無表情さと、2m位の高身長にロングコート・制帽・ブーツという出で立ちでゆっくりと歩く姿は威圧感があってとても怖い。
暗いシーンでも、この人のシルエットだけで恐怖感を煽られる。
ヒロインの落としたイヤリングを片耳に付けているところも凄く気持ち悪くて、殺人犯&ストーカーという、まさに地獄の組み合わせ。

でもどうしても「元力士」という設定が邪魔をするというか…とても印象的なキャラなんですけど、やっぱりどう考えても力士っぽくないんですよね。
殺し方も残忍で凄惨なんだけど、張り手する訳でもないし、一本背負いとかする訳でもないし…。
ロッカーごと圧縮死とかもかなりの力技で凄いなぁと思ったんだけど、これもやっぱり力士じゃなくてもいいし…。
元力士って設定をもっとゴリゴリに生かしてくれていたら、かなりツボにハマる映画になったんじゃないかと思う。

とは言え、何かが心に引っかかる不思議な余韻の残るラストなんかは結構好き。
何となく秋子とあの人にそこはかとない不倫の匂いを感じたし、最後に秋子が歩いていく方向なんかも深読みしたくなってしまう。
茜